そして迎えた最終盤、フィッシャールール特有の1秒を争う極限状態の中で事件は起きた。深浦九段は▲4三角成を目指したが、秒に追われたために着手が乱れ、なんと駒が盤上で“逆立ち”してしまうという珍事が発生。しかし、伊藤二冠も小さく頷いて着手を認めたため、盤上の両者はそのまま対局を続行。その後、伊藤二冠は121手で静かに投了を告げた。
これで決着がついたかと思われたが、TDIルシーグ横浜の控え室は騒然としていた。モニターで見守っていたチームメイトたちから「あれは取れていなかったのでは」「駒が立っている。さすがにダメでしょ」との指摘が上がり、事態は急展開を迎える。チームの監督を務める森内俊之九段(55)がただちに控え室を飛び出し、立会人を務める川上猛七段(53)、対局監修の野月浩貴八段(52)のもとへ異例の申し立てを行ったのだ。
森内監督からの申し立ては、「深浦九段が着手未完了のままチェスクロックを押したのではないか」という対局結果に直結するもの。しかし、川上七段、野月八段が本大会の追加規定に照らし合わせて協議を行った結果、「投了優先」の原則が適用されることに。伊藤二冠がすでに投了の意思を示していたため、結果は覆らず深浦九段の勝ちとしてスコアが確定した。
超早指し戦ならではの極限のプレッシャーと、1秒の重みが引き起こした盤上のハプニング。今回の事案を踏まえ追加規定の改訂を行われることとなったが、両チームの勝利への執念がぶつかり合った結果の異例の事態に、視聴者も大いに沸き立つ結末となった。
◆JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026 超早指しの『ABEMAトーナメント』と『地域対抗戦』が融合した新シリーズ。全国を6つの地域ブロックに分け全8チームによって競う団体戦。各チームは監督1名とドラフト会議で指名された棋士4名の計5名で構成される。予選は4チームずつ2リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出。試合は5本先取の9本勝負で、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。今大会より「先手番入札制度」を採用。対局開始前に持ち時間を「競り」にかけ、提示した時間がそのまま対局時の持ち時間からマイナスされる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)


