このジャケットの素材となっているのが、福岡を代表する伝統的工芸品「博多織」である。博多織は先染めの糸を使い、細い経糸(たていと)を多く用い、太い緯糸(よこいと)を強く打ち込んで柄を織り出すのが特徴だ。生地に厚みや張りがあり、一度締めたら緩まないという実用性の高さから、古くは重い刀を腰に差す武士の帯として重用されてきた特性を持つ。
その歴史は非常に古く、鎌倉時代の1241年に宋から帰国した満田彌三右衛門が製法を伝えたのが起源とされ、約480年前に現在の「博多織」の原型が完成した。江戸時代には筑前を領した黒田長政によって徳川幕府への献上品に選ばれ、その風格と希少価値が厳重に保護されてきた歴史を持つ。戦後も伝統の技は脈々と受け継がれ、現在ではコンピュータ技術なども取り入れながら、帯だけでなくネクタイやギフト製品、そして今回のようなスーツなど、多種多様な製品へと進化を遂げている。
武士たちに愛された「締めたら緩まない」という力強い伝統織物の特性
