話題が「田舎暮らし」に及ぶと、東出は現在、移住を希望する人々からよく相談を受けるのだと切り出した。しかし、実際に今の生活を捨てるという決断に踏み切るのは非常に難しいのだという。自身もかつては同じ葛藤を抱えていた。東出は「私もこういう生活したいと思ってたけど、東京でずっと成功を積んできてたつもりだったから、だからポーンと田舎に移住なんて怖いんですよね」と当時の心境を振り返った。
都会で必死に築き上げた地位や実績が大きければ大きいほど、それを手放すことは「今までの自分を捨てる」ような恐怖を伴う。その言葉に、都会の最前線を走り続ける箕輪も「せっかくここまで積み上げたのに、捨てることになるかって思いますよね」と深く共感の声を上げた。
様々な紆余曲折を経て山へ飛び込み、結果として「思い描いていた通り本当に良かった」と感じている東出。だからこそ、なぜあの時もっと早く飛び込めなかったのだろうと考えた末に、一つの結論に達したのだという。それが冒頭の、人間は自らの過去の選択を全肯定したいがために思い込み、理性でブレーキをかけてしまうという心理だった。
理屈を捨てて一歩を踏み出すことで、色々なものに挑戦できるようになり、世界のどこでも生きていけるようになる。かつて世間からの激しい批判を浴び、どん底から山に救われた東出だからこそ、その言葉には虚飾のない重みが宿っていた。
