【独占】「サッカー日本代表はどこまでいける?」W杯戦士と人気サッカー漫画原作者が初対談

 “史上最強”とも称されるサッカー日本代表は、北中米ワールドカップでどんな景色を見ることができるのか。

かつてエースストライカーとして日の丸を背負い、日本をW杯本選初出場へ導いた一人・城彰二氏と、
日本に『ジャイアントキリング』の言葉を広めたサッカー漫画界の金字塔・綱本将也氏の初対談が実現。

これまでの日本サッカー史を振り返りながら、今回のW杯への希望と展望を同じ時代を知る2人が熱く語る。

「ドーハがあるから今がある」

1994年W杯アジア最終予選。
イランを相手に2-1とリードする日本だったが、終了間際にコーナーキックから同点ゴールを許し、悲願のW杯本選初出場を逃す結果となった『ドーハの悲劇』。
日本サッカー史上最大の悲劇として語り継がれてきた。

:やっぱりドーハからつながってると思うんですよ。
ドーハの悲劇であと数秒で(本選に)行けなかった。
カズさんとか井原さんとか中山ゴンさんとかドーハ組は、本当に死に物狂いで。
「あと数秒だったから、もう一度取り返したい」という想いが。
やっぱりドーハからフランスに、そして2002年(日韓W杯)につながる。
2002年は自国開催っていう強みもあったので、この辺の熱はすごかったなと。
僕は98年、カズさんの代理でエースとして戦って、3戦全敗ノーゴールという結果で。
空港で水をかけられたりね…。
もしかして先生がかけたんじゃないですか?

綱本:いやいや、僕じゃないですよ(笑)

:日本にとっては苦しい予選も、あの98年フランスに行くためには絶対必要でした。
今と考えると雲泥の差なんですよ、レベルが。
でも下手くそなりに、やっぱり熱い想いがあったりとか、負けたくないとか。
そういったものがあったので、それをサポーターの皆さんだったりとか、いろんなものが引き上げてくれた年代でもあったかなっていうね。
だからあの時代はやっぱり必要だったと思うし。
これからもそういうイズムというか、気持ちを選手は絶対持っているし、サポーターも熱くていいと思います。

「あの頃は未熟だった。だから熱があった」

綱本:2002年のワールドカップぐらいが、とにかく闇雲に盛り上がっていたというか、そこから成熟されていった感じがするんですよ。
2002年の時、僕も顔にペイントしましたもん。シール買ってきてやってみようみたいな。
やっぱり全員が未熟だったのが、未熟なりになんとかしようと思ってたので、過剰にもなって、異常な熱が出た気がします。

:でも、あの熱があったからこそ引き上げられたと思いますよね。
だって俺たちマジでサポーターに殺されると思ってたから。本当に熱量がすごいし。
だから逆に「この人たちを絶対に喜ばせたい」とか、「この人たちに負けない」っていう。
戦いみたいな感じでしたよね。サポーターとも。
勝った時は一緒になって喜んでくれるし、負けた時はどん底まで落とすようなバッシングをされるし。
それが僕たちにとってはすごく大切な栄養素だった。

W杯 キーマンは? 三笘の穴を埋めるのは…

綱本:僕が思うキーマンは、左シャドーで起用される選手です。
多分、伊藤純也選手だと予想していますが。
ドーハの悲劇っぽいんですよ、イメージが。
あの時、都並選手がケガで出場できなくて、代わる代わる色々な選手を試していたんですが、最終的に穴が埋まらなかったっていう言い方をずっとされてたんですよ。
だから今回1戦目で、左シャドーで起用された選手が点を取ったりすれば、もう誰も三笘選手のことを言わなくなるんじゃないかな。
その左サイドが機能しなかったら、「三笘がいれば」みたいなことを言われると思うんですけど。
それがないように、初めに点を取ってくれれば、もうバッていっちゃうんじゃないかと。
三笘選手の不在は非常に残念ですが、現実にいない選手のことを願ってもしょうがないので、それを払拭するようなプレーを、伊東選手をはじめとする左シャドーの選手に期待したいです。

:僕もそう思います。中村敬斗では多分あそこはできないし。
ただ中村とのコンビネーションとかいろんなことも考えると、同じチームでやっていたというのと、タイプがちょっと違うので伊東を前に入れて、サイドに中村を入れてっていう風にすると面白いかも。
その2人で崩していけたりもするかなと思いますね。

森保監督が作り上げた“日本代表”というチーム

Q:キーマンを1人に絞るなら?

:1人に絞る? これ難しいですね…。
でも森保さんじゃないの?
監督がどういう采配をするか、どんなメンバーを選ぶか。

綱本:今大会はサポートメンバー(吉田麻也、南野拓実など)が非常に協力的です。
昔はちょっと悲運な感じの人たちがいるって感じだったんですけど、
今は普通に「協力します」みたいな感じなのがすごくいいなと。

:そうですね。
昔は「サポートメンバー?やんねえよ」っていう感じだったんですよ。
絶対俺たちの時代はしたくない。
「サポート役に回りたくない、やっぱり出たい」っていう感覚でしたけど。そこも今は違いますね。
でもこれはやっぱりチームワークとか、森保さんが作り上げてきた代表だからこそなんでしょうね。
森保さんの本当にいいところだと思うんです。
すごくコミュニケーション能力も高いし、選手といろんな話もするので。
“森保さんの形”っていうのができているからこそ、みんなもサポートしたいと思うんでしょうね。

「W杯」という大会の異質さ。国を背負うプレッシャー

Q:代表選手たちへ、W杯で戦うための心構えなど伝えたいことは?

:海外でやっている選手が非常に増えたので、それなりの心構えは全然作れると思うんですけど、ただW杯ってちょっと特殊な大会なんですよ。
98年のアルゼンチンとの初戦のとき、ドーピング検査でシメオネ選手と3時間ぐらい一緒にいていろいろ話をしてたんですけど。
あれだけ世界のトッププレーヤーの彼でも「緊張するし、普段のプレーが全くできない」とすごく嘆いていて、「足がすくむ」って言っていたんですね。
「冗談だろ?」って聞いたら、「いや、本当にそうなんだ」と。
W杯って本当に国を挙げての戦いだから、そういう気持ちになるということを聞いて、やっぱりすごい大会なんだなと。
サネッティも日本に来たときとかにいろいろ話をするんだけど、やっぱり彼も尋常じゃなく緊張するのね。あんな怖い顔してるのに。
スーケルと話したときも、「普通に打てばいいところをなぜか迷ってしまう。そういう迷いが出るのがW杯かもしれない」と言っていました。
気持ちを高ぶらせることもできるし、逆に緊張感が増すこともすごくあるので。
選手としては平常心を保つのが一番だけど、無理だと思いますね。
だから逆に「楽しもう、楽しむんだ」っていう方に持っていけば、
リラックスして自分のパフォーマンスを出せるのかなと思います。

“心の支え”としてこの選手の重要性も説く。

:あとは経験値の多い選手がいるので。
長友なんて5大会連続で出るわけですから。
長友論争もありましたが、僕は絶対入れるべきだと思った。
やっぱり近くにそういう選手がいて、アドバイスだったり、何か話をするだけでも選手は落ち着くので。
98年はカズさんがいなくなっちゃったから。
(※三浦知良選手は日本代表が初出場したフランスW杯のメンバーに選出されなかった)
僕はカズさんに憧れて、カズさんの下でやってきた選手だったので。
急にカズさんがいなくなってしまったっていう不安もあった。
だからチームの総合を考えると、そういう(経験値の多い)選手もいて、「どう勝っていこうか」っていうことを考えてほしいなと思いますね。
でも、あんまり余裕を持ちすぎるとダメですね。
まだ決勝から逆算ができるようなチームの力はないと思うので、まずグループリーグをどう突破するか。
98年は「初戦をどうするか」に100%。
でも今は、この3戦を踏まえて「勝ち点いくつでどう上がるか」っていうのを考えていると思うんですね。
幅が広がっていると思うので、そういうことを考えながら、冷静にプレーをしてほしいなと。
でもやっぱりなんかテンパるんだよね…。

綱本:W杯だけですか?

:僕はそうでしたね。
オリンピックでもそう思ってないし、他の国際試合とかも別にそう思ったことがなくて。
やっぱりW杯って、ちょっと特別なものなのかもしれないですね。

「“優勝”っていう言葉を掲げられるのはすごい」

Q:森保Jが優勝するために必要なことは?

:これは質問が難しいですよね?

綱本:もし何か(優勝するための策が)あったら、どうにかして監督に伝えたいです(笑)

:昔は本当に出ることが目標であったW杯であって。
それが歴史を積んで、2002年の自国開催でグループリーグ突破してとか。
そしてドイツや南アフリカに行ってとか、いろいろあったんですけど。
その中で選手も含めて「優勝」っていう言葉を掲げられるレベルになったというのはすごいと僕は思います。
僕たちの時代はそういうことを一言も言えなかったので。
メディアに「優勝するんじゃないか」とか言われたときは、「何も知らないくせに」と腹が立ったり。
その時代から比べて、選手が自分たちで高い目標を持ちながら話せる今は、やっぱりチャンスがないわけではない。
でも確率的には、一歩引いた目線で見ると、やっぱり世界はすごく強い。
だから僕は(優勝の確率は)5%ぐらいかな、というふうに思います。

「運を味方にしないと優勝には近づけない」

:5%って昔はなかったんですよ、本当にゼロだったので。
それを5%に持ってきた、このレベルの高い彼らはすごいなって思う。
それと優勝するためには運も必要かと。
空振りしていきなり点が入っちゃったとか、いろんなアクシデントがあるのがサッカー。
これは本当にやってみなきゃわからないですけど、やっぱり運を味方にしないと優勝には近づけない。
ただの実力だけでは絶対に成し遂げられないものだと思うので。
だから、どううまく予選を勝ち抜けていけるのか。
予選を抜けてもその先の相手は強豪なので、それを倒していかなきゃいけないんでしょうけど。
やっぱり僕は“実力よりも、その時の運”。
いきなり突出したプレーが出たりとか、そういうのってあるんですよね。
それでノって、1試合にそういうのが2人とか出てくると…。

城氏は前回のカタール大会で日本中を沸かせたあの話題を例えにした。

:『三笘の1ミリ』じゃないですけど、あんなの普通考えたらなかなかないことだし。
ああいった奇跡もあるし、もしビデオ判定がなかったら多分ゴールキックになってたと思うので、これも本当に運というか、そういった部分も必要なのかなって。
あとはもう思い切ってコンディションを整えて、みんなで戦うしかない。

綱本:これ以上怪我人出てほしくないですね。

:それは本当に思いますね。
グループリーグを突破しても32からスタートなので。
僕はまずとにかく“ベスト8の新しい世界”を見てほしいと思います。
選手は100%やってくれるので期待しかないです。僕たちは楽しんで見るしかないなと。
どういう状況になっても応援したいなと思います。

北中米W杯の最中、最後に綱本氏はこんな可能性をうかがわせた。

Q:今後W杯を題材にした漫画は?

綱本:もしかしたら『Mr.CB』の主人公がW杯に行くかもしれないです。
千明(ちぎら)がW杯に行ってほしいなとは思ってます。

城 彰二 (じょうしょうじ)
1975年、北海道室蘭市生まれ。元サッカー日本代表。
アトランタ五輪(1996)やフランスW杯(1998)でもエースストライカーとしてチームを牽引。
現在はサッカー解説者としても活躍。

綱本 将也 (つなもとまさや)
1973年、東京都生まれ。漫画原作者。
『ATLANTA 1996』 『Mr.CB』 『GIANT KILLING』 など、サッカー漫画を中心に数々のヒット作を手がける人気スポーツ漫画原作者。
Jリーグ創世記から『ジェフユナイテッド千葉(現在の呼称)』の熱狂的なサポーターとしても知られる。
これまでにJリーグだけでも(ジェフを中心に)約1000試合観戦しており、過去にはジェフの全試合観戦を8年間続けたこともあるという。

■『ATLANTA 1996』 2巻 “アトランタの熱狂が蘇る、アトランタ五輪サッカー譚”
■『Mr.CB』 18巻 “サッカー業界初!? 熱き魂のCB(センターバック)コミック”
6月19日 同時に発売される最新作にも綱本氏独自の視点が反映されている。

外部リンク
このまま画像を見る
続きは広告を見た後にご覧いただけます
クリックして広告を見る