
腰痛や腱鞘(けんしょう)炎と闘いながら、毎朝1人で麺を打ち続ける人気うどん店の店主がいます。ただ、後を継ぐ人が見つかっておらず、店は存続の危機に陥っています。
県外からも 繁盛店に成長
「日本一暑い街」として有名になった埼玉県熊谷市。強い日差しの中、うどん店の前には開店を待つ多くの客の姿がありました。
オープンと同時に店内は満席に。店のウリは、太くてコシが強い武蔵野うどん。うどんでは珍しい魚介豚骨のつけ汁で食べるつけうどんは、並盛りで450グラムとボリューム満点です。
店の一番人気は、客の半分が注文するという、まぜうどんです。
客
「魚粉の香りも強くて、お肉のうまみも入っていて、おいしい。大好きなまぜうどんです」
店主の加賀崎崇幸さん(55)。大学を卒業後、広告代理店に就職し、仕事の傍らうどん作りを学びます。
45歳の時、妻の祐美子さん(54)と念願の「こんこ屋」をオープンさせました。それから10年、今では県外からも客が通うほどの繁盛店に成長しました。
客
「東京から」
「(Q.埼玉ですよ?)そうですね、おいしくて」
連日150食分手打ちの労力
午前5時、仕込みは早朝から始まります。手打ち麺を提供することが加賀崎さんのこだわりです。
「(手打ちは)麺の形状とか武骨な感じになるので」
「口の中に入れた時に硬さが残っている太めのところ、ピロピロしている細めのところ、あと変によれているところ」
毎日、150食分を1人で手打ち。相当な労力が必要です。
「さすがにきますね。打ちながら、はぁはぁ言っちゃいますからね」
体調面の悩みも増えました。
「ヘルニアまでいかないんですが、腰痛がひどいんですよね。だから今、打っているのは、ごまかしごまかしです」
「右手がもう腱鞘炎で。ある一定の角度以上、曲がらないんですよね」
「これ以上いかないんです、痛くて」
近い将来うどんを打てなくなるかもしれない…その思いは、夫婦で感じていました。
妻・祐美子さん
「急に免疫が落ちちゃって、すごい体調を崩すんですよ。体調悪い中、毎日仕事に行く感じだったので、見ててつらかったかな」
「後を継いでやってくれる方がいればいいのかな」
かつて店で働いていたことがある娘夫婦に、後継ぎについて話を振ると…。
加賀崎さん
「(Q.娘さんの夫婦で店を継ぐ選択肢は?)ありだね、あり」
娘夫婦
「全然ない」
加賀崎さん
「即答かよ。アルバイトしてたじゃん」
後継者不足の飲食店現場
帝国データバンクの調べでは、全国の飲食店の後継者不在率は57.1%。廃業を余儀なくされる個人飲食店も少なくありません。
後継者探しに真剣な加賀崎さんは、店のSNSに「後継者を探してます」という投稿もしています。
加賀崎さんの元へ修行にくる人も少なくありません。
半年前から弟子入りしている築山尚史さん(38)。去年、消防士を辞め、うどん職人を目指しています。
加賀崎さん
「(長くゆでると)エッジが立たなくなってきちゃう。口の中でのみずみずしさというか、生き生きさがなくなったうどんになっちゃうんだよね」
築山さん
「ただ長くゆでればいいわけではない?」
加賀崎さん
「そういうこと。できる限り、ちょうどいい太さでといつも言っているところ」
「(Q.弟子の麺は何点?)20点」
築山さんが店を継ぐわけにはいかないのでしょうか?
築山さん
「自分のお店も出したい思いと、ここのお店半年以上やって、(店を継ぐ)思いもありますし、そこは今、悩み中です」
加賀崎さんの後継者探しは、まだまだ続きそうです。
「(築山さんに)のれん分けではなく、後継者で頑張っていただけるのであれば、他の方が名乗りを上げていただけるか分からないけれど、できれば(店を)残していきたいことを目標に生きていければなと思っております」
(2026年6月16日放送分より)
この記事の画像一覧
