
宿泊客は一日1組だけ。新潟県の山あいにある集落を丸ごと貸し切り、築200年以上の古民家に泊まることができる宿が話題となっている。その魅力を取材した。
集落での生活を体験
新潟県糸魚川市・市野々。かつてはおよそ40戸あったこの集落も、今は通年で暮らす住民は1世帯2人のみという限界集落である。
この集落が一村貸しの舞台。その名も「宿屋 堂道」だ。高く抜けた、かやぶき屋根や囲炉裏など築200年以上の古民家を拠点に田植えや稲刈り、雪かきなど、集落での生活を丸ごと体験できる。
株式会社伝燈 永田伊吹社長(31)
「この集落を未来に残していきたいというのが大前提であるので、集落を知ってもらうきっかけとして」
市野々で一村貸しを始めた永田伊吹さん。東京の設計事務所で建築家として働いていたが、およそ3年前に地域おこし協力隊として糸魚川市に移住してきた。
「集落の外に湧き水をくみに行く、住民の人が当たり前にやっている日常も体験してもらう」
湧き水は糸魚川の酒蔵でも仕込み水として使われる名水である。もちろん飲み放題だ。
宿泊客 藤嶋裕貴さん(38)
「まろやかな優しい感じがします。ありがたみを感じる」
住民との交流も
この日、集落を丸ごと貸し切ったのは7名の男女である。藤嶋さんは家での仕事が多いそうで、今回、自然を存分に味わいに来たという。
藤嶋さん
「非日常の環境で新しい体験をするという、やったことない体験を重ねてみたい」
さらに、この集落を語るうえで欠かせない人物がいる。およそ80年この土地に住む住民・齊藤義昭さん(85)だ。
宿泊者は集落の話を聞きながら散策することができる。
夕食はみんなで準備する。囲炉裏なども使って料理を作る。
悪戦苦闘しながらも無事、夕食が完成した。糸魚川産の丸ナスなどの野菜や魚、さらには集落で採れたおコメまで、地元の食材をふんだんに使った豪華な夕食だ。
食卓には齊藤さんもお呼ばれした。
齊藤さん
「しゃべりながら歩かせてもらって、ええ人たちだなと思って」
一村貸しによる参加者との交流は齊藤さんも笑顔にする。
藤嶋さん
「知的好奇心がすごく刺激されるし、世界が広がった」
活動を続ける中での不安
永田さんは過疎化で築200年以上の古民家がなくなっていくのを目の当たりにし、この市野々集落を残したいと一村貸しというアイデアにたどり着いた。
永田社長
「(市野々は)集落を残そうとしている住民や住民関係者がたくさんいるエリア。人を呼び込めるような仕組みを考えようと思いました」
しかし、活動を続ける中で、ある不安があった。
「新しく来て、いろいろな活動をする中で、(地元住民の)信頼を獲得していくことが難しい。草刈りをしたり除雪をしたり、自分なりに工夫している。まだまだよそ者であることに変わりはない」
外から来た自分が始めた一村貸しを、齊藤さんが本音ではどう思っているのか、聞くに聞けない思いを抱えていた。しかし…。
齊藤さん
「自分がいなくなれば、誰もいなくなるという気持ちでどうしたもんかと思った矢先に、永田さんが。救われる気持ち。永田さんには根掘り葉掘りいろいろな話を聞いて、永田さんなら大丈夫という気持ちで、今は全面協力したいと思っております」
永田社長
「(涙を流す)すみません、感動しちゃって」
「グッと思うものがあって。ありがたいなというか、頑張らないといけないと改めて認識した。より魅力ある集落に関わってくれる方を増やしながら、一緒に作り上げていけたらいいなと思います」
かつて集落にあった風景を
集落丸ごと貸し切る「宿屋 堂道」を運営する永田さんは、集落の住民である齊藤さんの夢をかなえるため、かつて集落にあった風景を取り戻そうとしている。
それが「ホタルの里 復活プロジェクト」である。
齊藤さんによると、市野々集落では初夏にホタルをたくさん見ることができたそうだ。それが田んぼに水を送るための水路をコンクリート製にしたところ、ホタルが徐々に見られなくなったという。
永田さんによると、水の流れが速くなりホタルが生育できる場所が失われたことが原因だそうで、今後は土を掘って新たな水路を作り直す計画だという。
2年後から3年後をめどに宿泊者向けのホタルの観察会を実現したいと、永田さんは話していた。
(2026年6月16日放送分より)
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