棋士への登竜門である奨励会三段リーグ。そこで年齢制限という非情なタイムリミットに直面していたのが、北海道・東北バルペックスの齊藤優希四段(30)だ。現在は将棋の早指し団体戦「JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026」でも躍動する彼だが、2023年当時は1勝6敗と成績が低迷し、将棋人生の終わりを覚悟するほどのどん底状態にあった。
精神的に追い詰められていた彼のもとに、親から一通のLINEが届く。「もうあきらめてもいいよ」「無理しなくていいよ」。家族からの優しくも切ない言葉は、「もう無理なんじゃないか」という彼の諦めの気持ちをさらに強くさせた。盤に向かっても一喜一憂する感情すら湧かず、ただ朝起きて流れ作業のように将棋を指し、帰宅するだけの無気力な日々が続いた。
齊藤四段は、北海道札幌市で生まれ育ち、小学生の頃から何度も全国大会に出場するほどの天才少年だった。13歳で奨励会に入会し、高校卒業を機に単身で上京。そこから約10年間、棋士や奨励会員との練習将棋を重ね、パソコンに大金を投じてAI研究に没頭してきた。人生の全てを将棋に懸けてきたからこそ、夢が絶たれようとする恐怖と喪失感は計り知れないものだった。
「手紙って来るんだ」
