2つの事件で判断分かれた理由は?茨城・古河市“空気注入”で殺害か 懲役20年

2つの事件で判断分かれた理由は?茨城・古河市“空気注入”で殺害か 懲役20年
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茨城県古河市の高齢者施設で2020年、入所者2人が死亡した事件をめぐり、体内に空気を注入して殺害した罪などに問われている元職員の女に、判決が言い渡されました。求刑は無期懲役でしたが、1件については懲役20年、もう1件については無罪となりました。

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施設入所者2人が相次いで死亡

裁判長
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裁判長
「医学的な知識を悪用し、殺人事件であることが周囲の者に発覚しにくいやり方をした点は悪質といえる」

入所者の男性2人
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在宅復帰を目指す介護老人施設で起きた“連続不審死事件”の裁判。開かれた公判は54回、審理期間は210日におよび、裁判員裁判としては過去2番目の長さとなりました。

赤間恵美被告
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入所者の男性2人を殺害したとして殺人などの罪に問われているのは、看護師資格を持つ施設の元職員・赤間恵美被告(40)です。2021年12月。当時、勤務していた介護老人施設『けやきの舎』で、入所していた吉田節次さん(当時76)を殺害した疑いで逮捕されました。その後の捜査で、別の入所者である鈴木喜作さん(当時84)殺害の疑いも浮上。鈴木さんは2020年5月、吉田さんは、その2カ月後の7月に死亡しました。赤間被告は、鈴木さんが亡くなる1カ月前から施設で働き始め、吉田さんが死亡した、その日に自主退職しています。

2人の殺害方法について検察側は。

検察側最終論告から
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検察側最終論告から
「毒物等を用いていないため自然死と判断される可能性が非常に高い、完全犯罪を狙った大胆かつ狡猾(こうかつ)な犯行。理不尽で、ある意味で無差別的といえる殺人」

無罪主張も「無差別的で通り魔的」

いずれの被害者も、点滴用チューブに注射器の筒の部分『シリンジ』を接続して、静脈内に致死量を超える空気を注入し、殺害したと指摘。無期懲役を求めていました。

検察側の主張
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赤間被告側は。

赤間恵美被告
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赤間恵美被告
「空気を注入していません。殺害していません」

弁護側最終弁論から
「不確かなことで人を重く処罰することは絶対に許されない」

一貫して無罪を主張してきました。その中で迎えた7日の判決。裁判長は。

裁判長
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裁判長
「被告人は記録を見るなどして被害者の状況を確認したり、犯行に必要なシリンジ等を準備したりと、事前に一定の準備をしていたことがうかがわれる、ある程度、計画的なやり方といえる」

吉田さんの殺害について、懲役20年を言い渡しました。

赤間恵美被告
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決定打となったのは、同僚職員の目撃証言と物証です。吉田さんの容体が急変する直前、赤間被告が部屋に入り、シリンジを速い速度で押し引きするような不審な動きをしていたという証言。さらに、現場付近から見つかったシリンジから、赤間被告のDNAが検出された点です。

もう1件は他殺認定も無罪判決

もう1つの殺人については。

裁判長
「鈴木事件については犯罪の証明がない」

同僚の目撃証言
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鈴木さんについて、水戸地裁は「何者かが空気を注入したことにより死亡した」とし、他殺であることは認定しましたが、同僚の目撃証言については「記憶違いや勘違いなどが含まれている可能性を否定することができない」としました。

判決を受け、弁護側は。

趙誠峰弁護士
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趙誠峰弁護士
「第1事件(鈴木事件)についても色々言いたいところはあるが、結論において無罪になったということなので、それは非常に安堵(あんど)してますけれども。第2事件(吉田事件)については、死因だけではなく全般的に事実認定について不服はあります。赤間さんおよび弁護人の意向として、控訴の意向だと捉えていただいて結構です」

2つの事件判断分けた“犯人性”

殺害自体は認めた両事件ですが、有罪と無罪で判断が分かれたポイントをみていきます。

今回の裁判で争われていたのは、入所者の2人は本当に殺害されて死亡したのかという『事件性』。そして、事件だとして、赤間被告が殺害したのかという『犯人性』の2つがありました。

『事件性』について、検察側は「2人の遺体のCT画像などから体内に多量の空気を確認された」として他殺を主張。弁護側は、2人は病気が悪化して死亡した可能性は排除できないと主張しました。水戸地裁は、医師などの証言から、2人とも「何者かが体外から空気を注入したことによる、急性循環不全で死亡した」として、2人も他殺と判断しました。

『犯人性』については判断が分かれました。ここでは『犯人性』を認定するための証言の信用性が大きなカギを握りました。

水戸地裁は、有罪となった吉田さんの事件に関しては、被告人がシリンジを動かしている様子を見たという証言について、判決では「被告人が何をしているか気になったという過程から、被告人の様子を意識的に観察した上での証言であり、誠実なものである。記憶違いの可能性もうかがわれないから信用できる」などとして、赤間被告が空気を注入した可能性は十分にある、殺害した犯人だと認定しました。

一方、無罪となった鈴木さんの事件では、事件当日に鈴木さんの部屋に入っていく被告を見たという証言について「時間の経過、その後の記録の確認による記憶喚起、事情聴取の過程での誘導などにより、変容している疑いが強いと言わざるを得ない」として、証言は記憶違いや勘違いが含まれる可能性を否定できないとして、「犯人は入居者棟1階(つまり入所者が暮らすフロア)の職員の誰かである可能性が非常に高いというにとどまる」としました。

元刑事裁判官の片田真志弁護士に聞きました。

片田真志弁護士
「原則として、似た手口の2つの事件が起きても、極めて特徴的なものでない限り、一方の事件で“犯人である証拠”を、もう一方の事件の証拠として扱わない。今回“空気注入”という共通点はあるが、裁判で、この手口は赤間被告だけが行える“顕著な特徴”ではないと判断。それぞれ個別に検証された結果だと考えられる」

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