■ゲーム事業、海外売上は鉄鋼業の輸出額並み
政府が戦略17分野の1つに位置付けるコンテンツ分野において、昨年度補正予算で約350億円の規模を持つ支援事業「IP360」が始動した。「エンタメ政策5原則」に基づいて支援策が具体化され、大規模作品製作支援としてDeNAの新規モバイルゲーム開発に上限15億円、海外展開支援としてKADOKAWAグループのイベント出展などが採択された。
ネット上では「なぜ利益が出ている大企業に私たちの税金が使われるのか」といった疑問の声もあり、これに対して経産省はX上で異例の説明を投稿。「大企業への利益提供ではなく投資を呼び込む政策であり、約1000億円の民間投資を促進する」「利害関係のない第三者の審査委員が選定した」と釈明した。過去には官民ファンド「クールジャパン機構」が540億円の累積赤字を抱えた事実があり、国費投入に対する厳しい視線が存在している。
2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は、「大企業であれば、儲かると思えば自腹でできる。なぜ貧乏な国民が払った税金をもらうのか不思議だ」と支援に疑問を呈した。さらに「個人を支援することでいきなり売り上げが上がるケースがある。(個人開発の)『めっちゃカメレオン』というゲームは1週間で10億円ほど売り上げた。一方で、モバイルゲームは自動車産業と違って日本には技術の積み重ねや特許がないため、税金を投入したところで倒産もあり得る」と指摘し、目利きの不在を批判した。
経済学者の柿埜真吾氏も、「かつて青少年に有害だと言ってアニメ産業を潰そうとしていたのは政府であり、国の支援で成長したわけではない。1980年代にフランス映画の予算を倍増させたが華やかにはならなかった。予算をつければ成長するという発想は危険であり、どこの馬の骨とも知れない新しい人ではなく、国に対するアピールが上手な実績のある人がお金をもらうことになる」と懸念を示した。
これに対し、衆議院内閣委員長・山下貴司氏は「日本のコンテンツ産業は規模15兆円、海外売上6兆円の基幹産業であり、ゲームの海外売上3.4兆円は鉄鋼の輸出額とほぼ同じだ。しかし、世界市場の6割を占めるモバイルゲームでは中国が日本の9倍、韓国が4倍の売上を誇り、圧倒的に弱い」と現状を分析した。その上で「スタートアップなどの小規模なところは文化庁の予算200億円を活用し、経産省は日本の基幹産業を後押しするという役割分担がある」と政策の意義を強調した。
同事業の研究会構成員を務めた同志社大学経済学部の河島伸子氏は、「日本にはIPを生み出す力はあるが、グローバル市場で戦っていくための流通網に課題がある。補助金は必要総額の2分の1が限度であり、相手は海外の会社。政府としての投資であり、後押しが必要だ」と理解を求めた。
■大きな支援額を誰に託すのか 海外相手に戦うには
