■「希望格差」と50代男性の孤立 社会的背景の分析
家族社会学者で中央大学教授の山田昌弘氏は、こうした事件の背景に「希望格差」の問題があると指摘する。「昭和ごろまでの日本社会は、努力すれば報われる、家族を作ったり仕事で収入が上がったり仲間ができたりする社会だったが、平成以降は努力がなかなか報われない。いくら頑張っても正社員になれない、結婚できないという人が増え、それが固定化している。将来にわたって希望が持てない状況が絶望感を生み出している」と分析する。
また、今回の容疑者のように男が大友さんに連絡を取ってきた点については、「誰かとつながりたいという希望の表れではないか。大友さんが(男を)個人として見てくれたことを、この人も感じたのではないか」と述べる。
さらに、「今の50代男性の3分の1は、配偶者がいない状況にある。失われた30年のツケが今50代男性に現れている。仕事もうまくいっていない男性は、自分から積極的につながりを作れない構造が日本社会にできてしまっている。50代で孤立している人たちへのつながりをどうやって作るかを考えなければいけない時代になっている」と語った。
元経産官僚の宇佐美典也氏は、制度的な問題として中年男性へのケアの欠如を指摘する。「日本社会は中年男性の孤独や貧困に鈍感すぎた。女性の貧困や孤独に対応する窓口は各地に設けられているが、男性が訪ねやすい場所は基本的にない。男性の孤独に何か手当てしようとすると、それは自己責任だという形でずっと手当てしてこなかった」と述べる。
今回の男についても、「最近こういうことをやって死んでもいいかと思ってきた、という書き方をしているが、逆に言えばそれ以前は『そういうのはダメだ』という認識がはっきりあったわけで、それがどんどん追い詰められてきている。『助けてくれ』と言えないから、代わりに自暴自棄になるという宣言をした。そういう中で誰かに話を聞いてほしくて、大友さんがいてくれた」と見る。そして、「(秋葉原の)加藤氏のケースとかなり似ているが、あの時は止まることがなかった。今回止まったということは、社会として少し希望がある。こういう人は我々と理解し合えない人間ではなく、隣人であることをやめようとしているその瞬間を見つけたら、『ちょっと待とうよ』と言える人が周りにいることが大事だ」と訴えた。
EXIT・兼近大樹は、「どこにも属せていない、コミュニティに入れていない人たちはSOSを出せない。SNSで大暴れしている人は予備軍の可能性もある。みんなレスバ(レスバトル)している場合じゃない。『こいつ、危険なことを言っているな』と思ったら、張り合っている場合じゃなくて、その人に寄り添ってあげなきゃいけない」と述べた。また、「犯罪に関しては、絶対に起きてからの対応になってしまっている。加害者になる前に誰かが関わってつながっていくことが大事で、今回の件はまさに予防だった。余裕のある人たちがもう少し支援に携わってくれないと予防も難しくなる」と語った。
大友さん自身は、「行政も法律があるから法律の範囲で人を守るが、法律があるからそれ以上はやれないとも言う。法律が人を救うけど、法律が人を排除もする。おせっかいな自分みたいな人間が手を携えて『どうですか』とやるしかない。無差別殺人をなくしたいという信念で、形が変わっても続けていきたい」と語った。
(『ABEMA Prime』より)

