■観光しても不謹慎ではない?SNS上の空気感がもたらす萎縮
今回の地震で、観光名所の一つである阿蘇地域の一部で震度5弱を観測したものの、建物や道路への大きな被害は比較的少なかったとされる。しかし、阿蘇温泉観光旅館協同組合代表理事で阿蘇プラザホテル社長の稲吉淳一氏は、「今週はお盆なので少しお客様が戻ってきている状況だが、私どものホテルでも6割から7割の稼働にとどまっている。周辺の観光施設や飲食業も5割から6割という状況で、外から見ても車の行き来がまだ少ない」と現状を説明する。
熊本県の木村敬知事は「観光の被害は甚大だ」と述べ、被害がほぼない阿蘇地方や天草についても「本当に厳しい現状がある」と語る。宴会需要の激減についても触れ、「ホテルの宴会なども今、思いっきり減っている。観光振興にしっかり取り組んでいきたい」と述べた。
稲吉氏によると、発災直後には12月分の予約までキャンセルが相次いだという。ただ、「最近はSNSで一般のお客様が『阿蘇地方や天草なら行けますよ』とつぶやいていただけるので、観光に行くことが災害支援という考えを持っていただいているのではないか」と話す。
2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、観光客が減少している要因としてSNS上の空気感を挙げる。「阿蘇プラザホテルには被災者の方も宿泊している。その横で『ウェーイ!』と飲み会しづらい空気もあるのではないか。被災地に物を送った人が売名だとSNSで叩かれたりもする。どちらかというと、『危うきに近寄らず』という感じで、本来お金を落としに行った方がいいと分かっている人も、今行くとマイナスの影響があると思ってしまう」と指摘する。
その上でひろゆき氏は、「これは市民がどうこうで解決する問題ではなく、何が正しいのかを明確にする公の機関があった方がいい。熊本県知事がこの地域はもう被災と関係ないので飲み会でも何でもしてくださいと言ってくれる根拠があれば、楽しく飲み食いして帰りましたとSNSで書いてもバッシングに対抗できる。現段階では今行くべきではないとか、被災者の気持ちを考えろという人に反応する材料がないのが難しさだ」と述べる。また「余震が終わったと気象庁などが言ってくれれば、ビジネスをしている方もお客さんを呼びやすくなる」とも語った。
文筆家・佐々木俊尚氏は、能登地震の際にもSNS上の世論が一方向に振れすぎた問題があったと指摘する。「最初は『ボランティアはまだ来ないでくれ』と発信されたが、『もうボランティアは行ってはいけないんだ』という情報だけが増幅してしまった。被災地の状況は時々刻々と変わっていくのに、そのグラデーションをSNSの世論がなかなか受け止められないという問題が確かに起きている」と述べる。
佐々木氏はさらに、「どんなことをしても叩く人はいる。叩く人を無視していいという文化を作ればいいが、叩かれると怖いという人はたくさんいる。そこをどうするかという問題に最終的にはなってくる」と語った。ひろゆき氏は「旅行に行ったら楽しいところを見せたいのは当然で、熊本では見せられないとなれば他に行こうとなってしまう。『ウェイウェイ』と楽しんでくれた方が需要は元に戻る気はする」と述べた。稲吉氏もこれに同調し、「熊本全体が全部被災地というわけではない。大丈夫なんだということをどんどん出していただければいいし、それは決して不謹慎なことではないと思う」と語った。
情報発信のあり方については、佐々木氏が「道路の状況や公共交通機関がどうなっているかの情報は調べれば分かるが、まとまって可視化されているものがない。どのエリアがどういう状況で、交通面としてどうなのかを赤・黄・青などで示し『ここなら全然大丈夫だから来てください』と言えるポータルサイトを作ってもらうといいのではないか」と提案した。木村知事は「全くその通りだ。阿蘇は道路も問題なく普通に動いている。そのことを改めて発信することを心がけなければいけないと気づいた」と応じた。
■「ふっこう割よりも風評被害対策」
