「ChatGPTも回答が…」大学の授業についていけない学生へ向けた「大学生の塾」とは? 国立大・早慶など難関大生まで通う深刻なワケ…慶応大教授が指摘する“大学側の責任”

わたしとニュース
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■入試制度の変更コストと、高校・大学間で生じるギャップ

 大学の授業についていけなくなる背景には、入学前におけるいくつかの課題が存在する。溝井塾長によると、その一つが入試の科目設定だ。多くの理系学部では入試時に理科を選択式にしており、必要な科目だけ選んで受験できる。しかし、入学後は教養課程として物理・化学・生物のすべてが必修となる場合がある。また、経済学部や商学部などは一般的に文系に分類されるが、統計などを扱うために入学後は数学が必修となることが多い。受験時に数学を避けてきたのに、入学後にいきなり「微積」の授業が始まり、行き詰まることもあるという。

 しかし、受験生にとっては、受験に関係のない科目を勉強せず、必要な科目だけに「全集中」するのも1つの戦略だ。

 こうした現状を受け、中室氏は、「大学の入学試験で求められる科目や内容が、入学した後に必要な学力や科目と合っていないというミスマッチが起きていることは間違いない。本来、教育を提供する大学側がちゃんとやるべきことなのだろうと思うが、それを大学側がちゃんとやっていないから、結果として親が資金を負担する形で学習塾に行っているという問題だ」との見方を示した。

「物理や化学、生物が必要なのだというのであれば、入試の科目にそれを据えておくというのは当然必要だと思う。経済学部は数学が非常に多用されるので、経済学部の入試で数学をやるというのは必要なのではないか」

 さらに、経済学だけでなく社会学などでもデータの解析などでコンピュータサイエンスの技術が多用されるようになり、学ぶ内容が変化・高度化しているという。

 では、入学後に学ぶ内容に合わせて入試制度を柔軟に変えればよいのではないか、と考えるところだが、中室氏は「入試のあり方を変えるというのは、大学から見るとものすごくコストが高い」と説明する。

「何が大変かというと、試験は大学の先生が作っているが、それが教員の専門と紐づいている。例えば物理の問題は物理の専門の先生が作っている。入試科目を増減させるとなると、教員も増やしたり減らしたりしなければならないが、教員を減らすのは難しく、その先生の仕事を奪うことにもなりかねない。日程や会場の確保なども含め、大学にとって入試制度の変更は非常にコストが高い。不合理に見えるかもしれないが、大学側にはそのような事情がある。もし仮に現在の入試の仕組みを維持するのであれば、大学に入った後に心配なく授業を受けられるような補修授業などを、ちゃんと大学の中で用意しておくべき」

 また、推薦入試や総合型選抜などで12月までに年内合格が決まった場合は、その後入学までの間に勉強を止めてしまう「中だるみ」の懸念もある。中室氏は「大学で必要とされる勉強を先取りする時間に充てられれば良いが、うまく使えていない。ただ、推薦などで早く合格が決まった人が大学に入ってからついていけていないかというと、はっきりしたエビデンスはない。推薦や総合型選抜で入った人と一般入試で入った人の大学進学後の成績を比較した研究では、あまり差がない、あるいは総合型選抜の学生の方が成績が良いという結果もあり、入試の形態自体が原因とは一概に言えない」との見解を示した。

 また、文系なのに理系学部の指定校推薦を受けて単位を落としたケースについては、「進路指導の先生にも、あまり無茶をしないように勧めたい。入ってから単位が取れず、留年や退学になってしまっては元も子もない」と語った。

 さらに、大学側の対応にも言及して「ミスマッチを起こさせないために、大学側は入学後にどのような基礎知識が必要になるのかをもっとちゃんと発信しなければならない。高校の進路指導の先生は教育学部の出身が多く、理工系の学部で何をやっているかわからないまま指導していることも多い。だからこそ、大学側からの積極的な情報発信が必要だ」と述べた。

(『わたしとニュース』より)

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