■「不愉快だからといって直ちに違法とは言えない」
弁護士の深澤諭史氏は、現行の日本法における規制の難しさをこう説明する。「現行法にはディープフェイクそのものを規制する法律がない。1対1でDMを送っただけの場合、名誉毀損や肖像権侵害など、公にした場合を想定した規制を適用するのは難しい。わいせつ画像の場合も不特定または多数への送信であれば送信罪となるが、単独では適用が困難だ」。
セクシャルハラスメントとして訴えることの可否については「1対1でも精神的苦痛を覚えた場合は民事上の不法行為になり得るが、セクハラは職場や学校など継続的な人間関係の中で、その場から離れられない状況を基本的に想定している。ネット上でメッセージが1通届いた程度では適用が難しい」と説明する。深澤氏自身、かつて法廷で裁判官から「見なきゃいいじゃないか」と言われたことに言及し、「裁判所のハードルは高く、不愉快だからといって直ちに違法とは言えないのが基本的な考え方だ」と説明した。
一方で、今回の神奈川県のケースについては「職場でのセクシャルハラスメントとして違法行為の対象になり得るし、地方公務員法の規定に基づく懲戒処分の対象にもなる」と説明。停職6カ月の処分については「悪質ではあるが、重すぎるという考え方もある」と言及した。
性的なディープフェイクを規制する際の「性的」の定義についても、深澤氏は「わいせつという概念自体が非常に難しく、『普通人の正常な性的羞恥心を害するもの』などといった最高裁の基準があるものの、実質的には何も言っていないに等しい」と指摘する。「悪いものを規制しようとしてその周辺まで規制されたり、萎縮して表現の自由が不当に制約される懸念もある」と述べ、法規制には慎重な検討が必要だとの見方を示した。
■“自衛”と表現の自由という観点
