■ミスマッチ防ぐ大学の取り組み…「リメディアル教育」&「出願時に条件」
大学側も決して手をこまねいているわけではない。多くの大学で学生支援センターが設けられているほか、高校レベルの基礎知識が不足している学生向けに「補習授業」を設定する動きが広がっている。
文部科学省の調査によると、入学前の補習授業を実施している大学は33.8%、入学後の補習授業を実施している大学は約30.3%にのぼる。中室氏は「高校と大学の接続におけるミスマッチを懸念する文科省の問題意識が背景にある。大学も何もやっていないわけではない」と解説する。一方で、「国立や早慶といった、いわゆる学力の高いとされる層の大学ではこうした補習があまり行われていない現実がある」と指摘。「慶応に長く勤めているが、学内での入学前補習の話は聞いたことがない。教員側も『補習授業をしなければいけない』という意識がなく、危機意識を持っていないのではないか」と推測する。
大学教育を受ける前提となる基礎知識を補う「リメディアル教育」は、昨今の高大接続において重要なポイントとなっている。中室氏は自身の留学時の経験を振り返り、「アメリカの大学院に進学した際、英語が母国語ではない学生向けの英語クラスや、開発途上国からの学生向けに数学を補う『マスキャンプ』などのリメディアル教育を受けた。アメリカではこうした教育が普通に行われている」と語る。
ただし、日本における導入方法については慎重な議論が必要だと中室氏は指摘する。「リメディアル教育には多くの研究があり、合格最低点などの線引きを下回ってリメディアル教育を受けた人と、わずかに上回って受けなかった人を比較すると、リメディアル教育を受けた人の方がその後の大学内でのパフォーマンスが高くなっていないという研究結果もある。大学生のような年齢層に対して手取り足取り指示しすぎると、本人の主体性や興味関心を失わせ、かえって逆効果になる懸念がある」と語る。その一方で、「基礎学力が著しく低い層には非常に効果があるという研究もあるため、誰をターゲットにして何をするかを精査することが極めて重要だ」とした。
また、補習教育は教員の負担になるという懸念もあるが、中室氏は「大学はものを教える場所。できない人をできるようにするのが教育であり、教員の仕事だ」と述べた。
大学の中には、大学での学びに必要な知識を、入試時に学んでもらう取り組みを進めているところもある。
昨年度、立命館大学、横浜薬科大学など25大学で導入されたのが、atama plus株式会社の「KODAI Bridge」という入試プログラムだ。出願を希望する人は、大学が指定する単元のオンライン講座を受講し、内容の修得状況がチェックされる。何度でも受講でき、修得したと認められれば出願資格が与えられるため、入学後のミスマッチを減らすことが期待されている。
中室氏は「大学で学ぶことが、いま自分が勉強していることと合っているかが確認できる。大学側は入試に関することを外に出したがらないが、その後の結果も含めて分析して公開してほしい」と述べた。
ただ、学生自身の意識改革も必要だと強調する。「学生側も主体性を持って自ら学ぶ力を忘れないでほしい。そうしなければ、この先の就職や結婚、出産といったライフステージにおいても、常に誰かに助けてもらわなければならなくなってしまう。若い人たちには、自分の人生は自分でハンドリングしていくのだという気概を持ってほしい」と提言した。
(『わたしとニュース』より)
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