■「女には無理」男性社会に残る“偏見”の壁を乗り越えて
しかしその裏では、跡取り娘としての苦労もあったという。「『製造業は男でなければできない』『女には無理』と常々言われていました。仕事で頑張りたい瞬間に残業できなかったり、どうしても子どもが優先になったりして、自分のMAXのパワーを出したい時に抑えなければいけない、仕事に全振りできないもどかしさがありました」。
歴史ある老舗の男性社会の中、徐々に芽生えたのが「自分が一番会社のことを大事に思っている」という自信だった。
「そのことを両親には話しました。そのタイミングで事業計画を出して、こんなふうにしていきたいと思っているけれど、社長は会社をどういうふうにしようと思っていますかという話を株主総会でさせてもらった。その時に私の覚悟を初めて話した」
いまでも親戚やきょうだいとビジネスでもつながり、その関係性を大切にする父を見て、「みんなの顔がわかる自分ならできる」と感じるようになったという。
「父は100%トップダウンで引っ張ってきて、何でも社長に聞くと解決する人。そのカリスマ性は自分にないというのが一つ自信のない部分。しかし、たくさんの人に協力してもらうことなら私にもできる。育成システムや原価の計算、そういったものが今現場にない状態なので、それを構築して『こういうふうにしてほしい』と依頼した時に、現場で実行できるように組織化していきたいと思って取り組んでいます。それで自分が代を継いだ時に、私の先100年続く企業に成長していけたらいいなと思っています」
現在2人の娘を持つ小野氏。自分の子どもにも跡を継いでほしいという期待はあるのか。「今の事業をやるのが一番楽しいと私は思っている。自由さもあるし、自分の思い描いたように仕事をさせてもらっているので、やってほしいけれど、外の会社を見てからじゃないとその良さも気づけないと思っていて、この仕事以上に楽しい仕事を見つけたのだったらそれをやればいいし、この信玄餅を作っている会社もすごく誇らしくてやりがいのあることだというのは、言葉にせずとも自分の姿で感じ取ってもらうようにしていて、あまり言葉で縛りたくないというのはあります」
外の世界を知る強みと、女性後継者が直面するジェンダーギャップ
