■役員から平社員へ…「手取り10万円」の過酷な現実
一方で、治療と仕事を両立する中で、キャリアと収入をめぐる厳しい現実にも直面した。かずさんは当時、取締役という重要なポジションにいたが、自ら申し出て一般社員へと立場を変え、給与は減額された。
「1年後に自分が生きているかもわからない中、高い給料をもらいながら休んだり通院したりすることに申し訳なさを感じていた。役員のストレスを手放したかったのもある」と理由を語る。しかし、給与が大幅に下がったにもかかわらず、社会保険料や高額療養費制度の自己負担額は「給与が高かった時の基準」で数カ月間計算されるため、「手取りが10万円になる一方で、医療費が毎月14万円かかり、貯金を切り崩す赤字生活が続いた。ノイローゼ気味になり、金銭的にも本当に辛かった」と、制度の狭間にある過酷なリアルを打ち明けた。
■産業医が語る「上司と部下の距離感」と「会社の役割」
内科医で産業医の森勇磨氏は、がんを公表された側(上司や企業)の対応について、「本人がどこまで周囲に周知してほしいか、どのような配慮を望んでいるかはケースバイケースであり、正解はない。上司と部下の関係性が深ければ、個別に対応できることも増える」と説明する。
一方で、企業側が担う支援の範囲についても言及。「働き続けることが必ずしも正解ではない。会社と福祉は違うため、提供できる価値(労働)と報酬のバランスが難しくなった場合は、契約形態を変えたり、一定期間休んで傷病手当金をもらうといった選択もある。会社側は、そうした一般的な知識を得られる『窓口』をまずは用意しておくべきだ」と語り、企業と労働者双方を守る仕組みづくりの重要性を強調した。
(『ABEMA Prime』より)
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