「時間よ、止まれ…」——。日本中がそう願ったに違いない。数々の熱狂を生んできた希代のエンターテイナーは、別れを告げる最後のコートでも、我々に信じられないような“魔法”を魅せてくれた。10月1日、東京・有明コロシアムで行われた「木下グループ ジャパンオープン」男子シングルス1回戦。今季限りでの引退を表明し、これが現役ラストマッチとなる錦織圭(ワイルドカード出場)が、第2シードで世界ランク8位のフランシス・ティアフォー(米国)と激突した。
立ち上がりから錦織は積極的に速い展開に持ち込み、全盛期を彷彿とさせる変幻自在のショットを披露。互いに1度ずつブレークを奪い合う見応えのあるファーストセットとなったが、第7ゲームで手痛い2度目のブレークを許し、第1セットを4-6で落としてしまう。
続く第2セットも、キャリアハイの世界8位につけるティアフォーの牙城は崩れない。第3ゲームで先にブレークを奪われる苦しい展開のなか、錦織もこれまでの経験をすべて注ぎ込んで必死に食いついていくが、トップランカーの分厚い壁に阻まれてしまう。それでも、錦織が意地の鋭角なリターンを鮮やかに決めると、この見事なショットにティアフォーは一歩も動けず、ただボールのゆくえを目で追うのみ。実況を務める鍋島昭茂アナウンサーからも思わず「すごい角度!」と興奮気味の声が上がった。
松岡修造氏も思わず「時間よ、止まれ…」
