■無償化で加速する公立高の定員割れと現場への影響
全国に先駆けて無償化を進めてきた大阪府の公立高校では、2026年度の一般入試(全日制)において、126校中55校が定員割れを起こす事態となっている。大阪府立佐野工科高校の定時制校長を務める松野良彦氏は、公立高校を取り巻く厳しい現状について「今まで定員割れをしたことがないような高校が定員割れをしており、現場の先生方もかなり驚いている」と明かした。
要因については、「無償化の影響で、先に私学専願で希望する生徒が増えている。公立高校の入試はどうしても私学より後になるため、その時にはすでに志願者がいない状況になっている」と指摘した。
さらに、定員割れが教育現場に与える影響として、「生徒数が減るとクラスが減り、教員の数も減らされる。それによって、これまで維持できていた専門性や教育の質が保てなくなる可能性がある。また、定員割れで入学した生徒は自己肯定感が低いまま卒業まで至ってしまうことがあり、モチベーションの維持が大きな課題になっている」と語り、現場のリアルな窮状を訴えた。
高校3年生と高校1年生の娘2人が私立高校に通う東京都港区在住のミナトノ氏は、「無償化になるので毎月3万円程度の負担で通えると聞いていたが、入学したところから様々な費用がかかり、実際はもっとかかることを痛感している」と明かした。
ミナトノ氏の場合、事前の想定は年間約36万円だったが、実際には年間約80万円の費用が発生した。国からの支援額は年額約45万円(就学支援金など)が上限であり、授業料以外にかかる教育拡充費(年18万円)、宿泊行事などの積立金(年12万円)、放課後学習支援費(年4万8000円)、iPad利用料(年4万5400円)などが重くのしかかっているという。
この“隠れ教育費”問題について、中央教育審議会委員で教育活動家の岩本悠氏は、「パッと聞いた時は私立高校に行った方がお得な気もするが、授業料の部分が実質無償化になっているだけで、他の費用が無料になっているわけではない。無償化という言葉に惑わされず、実際どのくらいかかるのかを学校側が適切に出し、それぞれが選択できる環境が大事だ」との見解を示した。
■意思決定が進む私立と制度に縛られる公立の格差
