■遅い質問通告と不明確な内容が招く「負の連鎖」
人事院の調査(2023年)によると、国家公務員の超過勤務をもたらす要因の第1位は「質問通告が遅い」ことだ。本来の退庁時間は午後5時15分だが、答弁着手可能時刻が午後6時28分であるため、作業が夜中までずれ込むという。第2位は「質問通告の内容が不明確」であることだ。例えば「社会保障改革について」といった一行だけの通告では、年金なのか医療費なのか何の分野なのか特定できず、官僚側はあらゆる事態を想定して大量の資料を用意せねばならず、非効率な作業を強いられる。
政治家側の責任について、谷口氏は「あると思う」としたうえで、次のように指摘した。
「質問の事前通告が遅くなるのは、国会議員の怠慢だけが理由ではないと思います。政治的な駆け引きや、政府から答弁を引き出すための事情もあるでしょう。ただ、通告する質問の内容が不明確なのは別の問題です。
例えば、『社会保障改革について』というだけでは、テーマを示しているだけで、何を聞きたいのかが分かりません。レポートでいえば、題名だけで中身がないようなもので、0点です。
官僚は、答弁の根拠となる数字や過去の事例を調べて準備します。だからこそ、何を聞きたいのか、どんな資料や数字を調べてほしいのかを、できるだけ具体的に伝える必要があります。それがなければ、実りある国会審議にはなりません。国会側には、官僚も審議を支えるために、一緒に働く仲間だという意識が足りないのではないでしょうか」
さらに、将来の担い手への影響も懸念した。
「もう一つ大事なのは、この働き方を見た若い人が『官僚になりたい』と思えるかどうかです。日本の行政は、優秀な官僚に支えられている面があります。その人たちが現場を離れたり、若い人が官僚を目指さなくなったりすれば、行政を支える人材が失われてしまいます。今働いている人のためにも、これから働く人のためにも、この状況を変える必要があります」と語り、官僚離れを強く懸念した。
こうした過酷な職場環境を改善するための対策として、佐藤氏は「質問通告の早期化」に加え、前日に決まることもある国会の審議日程について「政争の具にせず早期決定を」と提言。また、質問内容が不明確な点については、イギリスで導入されている「不明瞭な質問には答弁作成を拒否できる仕組み」などを参考にすべきだと提示。海外の事例も参考にしながら、未来の官僚や日本のために、業務の質を維持しつつ、適切な職場環境を整えることが急務となっている。
(『わたしとニュース』より)
この記事の画像一覧
