回り道は“悪”なのだろうか。

 「慣れてはいないですけどね笑まあ、やりたくはないですよ」

 10月30日に行われたブンデスリーガ第7節、ハンブルガーSV(HSV)戦の試合後に、大迫勇也は苦笑いを見せた。まだケルンに怪我人が続出する前のことだ。

 ホームに迎えたHSVに対して、ケルンは変則的な[4-3-3]を採用する。前半に大迫は3トップの右と左をこなし、後半に入ると、まずは[4-4-2]の左サイドをこなした。後半の途中から、ようやく本職のFWとして2トップの一角に入った。

 昨季は何度も起用されたことで、HSV戦における大迫のサイドでのプレーは、慣れたもののように見えた。しかし本人とすれば、決して「慣れてはいない」と言う。不慣れなものであることに変わりはなかった。

 フットボールの世界では、生き残るための自己主張は決して“悪”ではない。しかし望む/望まないに関わらず、いつもと違うポジションで起用されることで、見えてくることもある。サイドで起用された大迫が、自分がFWという生き物であることを改めて自覚したように。

 そして前半戦も終盤に差し掛かり、怪我人が続出したことでトップ下を任された大迫は、中盤が求めるFWの動き、を意識する。

 「こういうFWだったらいいな、ということはボールを持っていて思うし。まあ今、あんまり上手く機能していないからね、2トップ。パス交換もないし時間も作れないから、そこら辺はちょっと難しい。『あそこで時間を作れればもっと中盤が楽になるなあ』とか、『もっとゴール前に入っていけばいいのになあ』っていうのをすごく思いますからね」

 第16節レバークーゼン戦の後で、大迫はそう語った。トップ下でゲームを作ることによって、FWに求められる動き、を客観視することになった。FWとしてプレーを続けるだけでは、見えてこなかった世界。大迫が「あそこからゴール前に入っていくのは難しい」と言うように、中盤に下がれば、敵のGKが守るゴールからは遠ざかり、得点を奪う機会も減ってしまう。しかし“遠回り”をして、2トップが機能するために必要なことを再確認したことは、再びFWを任されることになった時に活きてくるのではないか。

 今季のブンデスリーガで、回り道を強いられている日本人選手は大迫に限らない。負傷により長期離脱となったが、所属先のマインツで武藤嘉紀はサイドではなくCFで、コロンビア人FWジョン・コルドバとポジション争いの真っ只中だ。今夏、ガンバ大阪からアウクスブルクに移籍した宇佐美貴史は、前半戦、出場機会そのものに恵まれなかった。

 9月18日のアウクスブルク戦で、66分にコルドバと代わって途中出場し、1ゴールを決めた武藤は“ポジション争い”について次のように語っている。

 「今、やっぱりFWでやっている以上、そこから逃げて他のポジションを取るっていうよりも、FWでポジションを取り返すことが、成長にも繋がるかなあと思っています」

 回り道は、決して“悪”ではないはずだ。

 取材・文/本田千尋

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