2016年のK-1・Krush戦線で、最も評価を高めた選手は小澤海斗だろう。
2月の王座決定戦で勝利し、Krush -58kgチャンピオンになると6月にはK-1参戦。しかも、スーパー・バンタム級王者(当時)の武尊との対戦だった。
ここで小澤は、それまでとは一変した“オレサマ”ぶりを披露。武尊を「踏み台」と断言し、記者会見では毒舌三昧。
武尊のイライラを引き出すとともにファンの視線を引きつけてみせた。会見場で乱闘にまでなったのだからファンは大騒ぎ。それだけ試合の注目度も高まっている。
試合は判定負けを喫したものの、最後まで闘志が衰えない闘いぶりを見せた小澤は、一躍人気ファイターに。武尊戦の余韻も残る8月、今度はKrush名古屋大会で-58kg王座の初防衛に成功した。
そして11月には、K-1に再び参戦。フェザー級の初代王者を決めるトーナメントにエントリーした。もちろん、狙いはベルトだけでなく、武尊へのリベンジでもあった。
決勝で武尊にまたしても敗れてしまった小澤だが、舞台は世界トーナメントだ。強豪外国人を下して決勝進出を果たしただけに、この闘いも小澤の株を下げるものではなかったと言える。2度目の防衛戦を行なう3月3日のKrush後楽園ホール大会がチケット完売になったことは、ファンが小澤を認めている証拠だ。
神戸翔太との王座決定戦こそ僅差の判定勝利だったものの、武尊には善戦。8月の初防衛戦では、粘る大岩龍矢に対し、しっかりパンチを当てて振り切った。11月のK-1では、その実力が世界レベルにあることを示している。
小澤は、チャンピオンになってからも成長を続けていると言っていい。3.3後楽園大会でタイトルをかけて闘うのは、自身が接戦を演じた神戸を圧倒している中国のユン・チー。しかし小澤が成長していることを考えると、過去の対戦での“三段論法”は通じないはずだ。
「KOするパターンは3つ用意してある」と自信のコメントを残している小澤。ハードパンチャーのユンに対し、より遠い間合いから攻撃できる蹴り技を磨くなど対策も万全だ。
王座防衛に向け「これは俺のベルト。誰にも渡す気はない」と語った小澤。“安定政権”樹立、そして武尊と三度、対戦するために。ここで成長を止めるわけにはいかない。
文・橋本宗洋