4月4日、ホーム開幕を迎えた横浜DeNAベイスターズの本拠地・横浜スタジアムに、野球場では見たこともない花火が打ちあがった。夜空にかつての「マシンガン打線」を思い出す花火の連発。それを実現したのは「ベイスターズトルネード」という“新兵器”だった。DeNAが親会社になった2011年は110万人だった観客動員は、わずか5年で194万人にまで増えた。その秘密は、球団関係者による強いこだわりと、データによる徹底した顧客分析だった。

徹底して楽しませる。DeNAの球団関係者に共通した意識だ。事業本部・本部長の元沢伸夫さんは「過去5年間で失敗もたくさんしてきた。そこで培ったイベントや演出に対する期待感を、お客様も感じて取ってくれているのでは」と期待していた。開幕に間に合わせるために試行錯誤してきた花火の演出。垂直方向だけでなく、斜めにも飛ばし、さらにはオリジナルの機械による新たな花火を実現した。
既に次の手は考えてある。5月には「ブルーライトシリーズ」と銘打ち、来場者に光るグッズをプレゼントするという。「ナイターで、試合後に球場を真っ暗にしようかと。そこでお客様が持っているグッズが光るんです。照明は2年前にすべてLEDに切り替えたので(点ける・消すといった)操作性が上がった」という。かつての照明なら、点けるも消すも時間がかかるのが常識だっただけに、最先端のナイター演出というわけだ。

グッズやフードへの手間のかけ方も、これまでのプロ野球チームとは一味違う。開幕に間に合わせようと考えてきた、球場の新たな看板メニューは、球団社長が試食でOKを出したにも関わらず、スタッフ側から再考を願い出たという。「去年の10月から取り掛かって、メニューを決めるのに年内までかかった。そこから何度も試食をしたのに、現場がこれじゃだめだと言い出して」と苦笑いした。それでも元沢さん自身も「東京の名店と呼ばれるところを何軒も食べ歩きましたよ。試食する自分たちのクオリティーも上げないと。普通に考えたら割に合わないですけどね」と、今度はにこやかに笑った。
演出やグッズ、フードに徹底してこだわれる理由は、大量のデータを分析したという下積みがあるからだ。親会社になってから、真っ先に顧客データの収集に精を出した。「一番は、まずどういう人が試合に来ていただけるのか。チケットを買っていただけるのか。そこが分かっていなかった」。球場内の機材を一新し、来場者の行動をデータ化していった。「システムには今でも毎年何かしら大きな投資をしています。バージョンアップもしているし、完成したとも思っていません」と説明した。男女、年齢、頻度、地域。さまざまな角度から見たことで、来場者に効果のある施策があぶりだされて来た。
球場外のファンに対するサービスも抜かりない。その1つが、テレビやインターネットによる試合観戦だ。「単純に1人でも多く、試合を見ていただきたい。テレビであっても、ネットであっても、その『面』を増やしたい」という。「昔、家では巨人戦が必ずテレビでついていて、受動的に試合の情報が入っていた。それが今はテレビだけでなくネットなのかもしれない」と、テレビ全盛時代と重ね合わせた。
肌身離さず持つ人も多いスマートフォンでの試合観戦は、球団にしても大きな訴求方法だ。「無意識にスマホやパソコンをいじっている時に、『あれ?DeNAの試合やってるんだ。じゃあ見てみよう』というものが出てくればいい。生活する中でのタッチポイントとしてネットが出てきただけに、必然的にネットでの放映は増やしたいと思う」。今年のDeNAの主催試合はインターネットでニコニコ生放送、SHOWROOM、スポーツナビに加え、DAZN、AbemaTVでも見られるようになった。
オフライン、オンラインともに数々の手法でファンの心をとらえるDeNA。「いろいろなこだわりポイントが多分にあるので、ファンの方には楽しんでいただきたい」。この日の花火の様子も、オフラインでの出来事ながら、SNSなどで拡散しているはずだ。
(C)AbemaTV
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