まさにスターの証明だった。4月22日、代々木第二体育館で開催されたK-1。今回もチケット完売の超満員となった会場で、フェザー級王者の武尊が復帰戦を行なっている。
昨年11月、2階級制覇を果たしたものの右拳を負傷し、欠場を余儀なくされていた武尊。今大会で久々のリング登場、アメリカのビクトー・サラビアと対戦した。
試合は序盤から武尊がリード。アグレッシブに前進し、三日月蹴りからパンチと攻撃を重ねていく。対するサラビアも「パワーには自信がある」と語ったようにパンチで応戦。スリリングな打ち合いが展開され、さらに両者が舌を出して挑発し合う場面も。
ところが、最終3ラウンドに大アクシデントが起きてしまう。サラビアのバックキックが武尊の金的を直撃。武尊は倒れ込んで試合中断に。吐き気、さらに震えも見られ、続行は不可能にも思われた。だが、武尊のプロ意識が試合終了を許さなかった。
「やるから待ってて!」と周囲を制し、なんとか立ち上がると試合続行。足の踏ん張りがきかない状態だったと言うが、だからこそパンチの回転に勢いが乗った。
「もうバチバチでいくしかない」という気迫のこもった猛ラッシュ。ダメージの残る体で、ついにはサラビアを完全KOしてしまったのだから凄まじい。いかにも武尊らしい、劇的な勝ちっぷりだ。
フィニッシュは左フック。武尊は欠場期間中、右拳を傷めていたため蹴りや左のパンチを徹底的に磨いてきたという。その成果が出たと言えるKO勝ちだ。
アクシデントを吹き飛ばす勝利、そして「年間全試合KO」の有言実行スタートに「試合ほど興奮するものはないですね」と武尊。ケガがない限り、毎大会の参戦を望んでいるという。
この日、行なわれたスーパー・バンタム級王座決定トーナメントでは、20歳の武居由樹が3試合中2試合KOの圧倒的内容で優勝。新たなスター候補の誕生だった。
武居について聞かれると「一緒にK-1を盛り上げていきたい」と武尊。K-1は次の6月大会からさいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナで開催、来年3月にはメインアリーナに進出する。K-1のさらなるステップアップに向けても、武尊の復活と新王者・武居の誕生は大きな意味を持つことになる。
文・橋本宗洋