4月26日のZERO1・後楽園ホール大会では、団体名物である『天下一Jr.』決勝が行なわれた。
リーグ戦として開催された今年、最後の闘いに勝ち進んだのは鈴木鼓太郎とショーン・ギネス。ノア、全日本で活躍し、現在はフリーで存在感を発揮している鼓太郎に対し、ギネスはZERO1マットでコツコツとキャリアを重ねてきた。その努力はレスラー仲間も認めるところ。
アイルランド人であるギネスがZERO1マットを守る立場になった決勝戦。ギネスは左目を大きく腫らしながらも粘りに粘り、最後はプリンス・デヴィットの得意技でもあるブラディ・サンデーを決めて勝利した。この日、決勝進出者決定戦では大谷晋二郎を下しているだけに、価値ある優勝だ。
優勝者に認められる「願い事」では「日本が大好きだから日本人になりたい。日本語の名前がほしい」と語ったギネス。表彰式の副賞プレゼンターをアイドルグループ・私立恵比寿中学の「ぽーちゃん」こと小林歌穂が務めたことも話題になった。
(仮面女子は「アイスリボンフェスタ」に登場。ゴムボートの「大航海」パフォーマンスを後楽園でも見せた)
これは、小林が出演するテレビ番組『オタクィーーーングリッシュ!』の収録が大会中に行なわれたことで実現。目の前で大仁田厚の大乱闘が繰り広げられるなど、驚きつつも“プロレスの聖地”を満喫したようだ。
この大会に限らず、プロレスの大会にアイドルが登場する機会は少なくない。4月24日の『アイスリボンフェスタ』では絶叫する60度、仮面女子がライブを行ない、ファンの熱が大会を盛り上げた。スルースキルズは全日本プロレスの応援大使。メンバーはプライベートでもプロレス観戦に行くほどハマっており、プロレスファンにも受け入れられている、スルースキルズのライブには、全日本のTシャツを着たファンも。
最も積極的なのが、各ジャンルとのコラボが巧みなDDT。大会にアイドルがゲストとして登場するだけでなく、多ジャンルのアーティストを集めた『DDTフェス』も開催。アップアップガールズ(仮)とは合同イベントも開催し、アイドルが路上(工場)で闘うというバカバカしくも奇跡のような空間を作り上げた。
WRESTLE-1ではCHEER1が公式サポーター。そのメンバーである“筋肉アイドル”才木玲佳はプロレススクール『プロレス総合学院』の一期生で、実際にレスラーデビューを果たし、東京女子プロレスでタイトルマッチも。LinQの伊藤麻希とともに本物の“アイドルレスラー”として注目されている。
もちろん、ドラマ『豆腐プロレス』出演をきっかけにSKE48の松井珠理奈が大のプロレスファンになったのも有名な話。プロレスとアイドルに関しては、以前から親和性が高いと言われてきた。
(全日本プロレス応援大使スルースキルズは公開記者会見でもミニライブ。メンバーのプロレスファン度もかなり濃いめだ)
かつてプロレスファンだった人たちがAKB48やももいろクローバーZのファンになっていったという説もある。成長物語や、華やかなだけでなはいドラマ性に共通部分があるのだろう。またアイドルの運営スタッフにプロレス黄金時代を見て育った世代が多く、プロレス的な仕掛けやワードを取り入れてきたという面もある。
新日本、AKBのような大メジャーだけではなく、中小規模の団体・グループがさまざまな個性を発揮しているのも共通点か。たとえば「新木場や蕨から後楽園ホール満員へ」というプロレス団体と「小さなライブハウスからZEPP、中野サンプラザへ」というアイドルグループの上昇志向はかみ合いやすいのかもしれない。
プロレスファンがアイドルを好きになり、アイドルのファンがプロレスにハマるという理想的な相乗効果があれば理想的だ。当然、コラボレーションに「大人の事情」が透けて見えてはファンも冷めるのだが。運営サイドやレスラー、メンバーがどれだけ楽しんでいるか、本気でやっているかをファンは皮膚感覚で分かっている。
文・橋本宗洋