5月7日、AbemaTV1周年記念企画『亀田興毅に勝ったら1000万円』が中継され、1420万視聴という数字を叩き出した。亀田はホストの神風永遠にTKO勝ち、YouTuberのジョーにレフェリーストップで勝利。第3試合は高校教師の松本諒太相手にTKO勝ちし、最後の試合では、暴走族の元総長・ユウタと3ラウンドで決着がつかずドロー。「亀田に勝ったら……」という条件だったため、1000万円を獲得する挑戦者はいなかった。
元々同企画では、18歳以上で腕に自信のある175cm、70kg以下の一般人を対戦相手として募集していた。引退してから1年半のブランクはあるものの、3階級で世界王者を取った元プロボクサーと一般人の試合についてプロの格闘家はどう見るか。柔術家でパラエストラ東京主宰の中井祐樹氏に今回の企画について話を聞いた――。(本取材は試合前に行いました)
危ないことにならなければいいなと思っていますよ。企画自体は面白いなとは思います。そして、亀田さんに挑戦するというのはどういった人間で、どういった人間がやりたがっているのか、格闘技界にいる者としては興味がないわけではないです。私も時期を同じくして、「道場(パラエストラ東京)で腕試し、いいですよ! 道場破り、いいですよ!」と書いていましたしね。
私は、力を持て余した人を格闘技界に誘いたいと思っています。ただし、亀田さんの件でいえば本当に、技術力、何もかも段違いなので、引退して約1年半が経過したとはいえ、危険なことにならなければいいですね。
あとは、亀田さんがそれなりの手加減ができるか、そこだけが心配です。ボクシングやK-1、キックボクシングとかもそうなのですが……「打撃が危険で、組技が危険ではない」という言い方はしたくないですが、打撃の方が、脳への障害が出る可能性が高い。そこを心配しています。打撃に関しては、ラッキーパンチはなくはない。組技の方がラッキーが起こりにくいです。打撃では、意識が飛んでしまったら終わりです。
それにしても、こういう企画が面白いってことになって、素人同士で叩き合うってのが当たり前になってしまうと危ない。何しろ何をどうすれば本当に危険なのか、ということが分かっていないと本当に相手に障害を与えてしまうかもしれないし、自分も身体に悪い影響が出るかもしれない。だから格闘技をやりたいのであれば「ちゃんと(道場に)入門する」というものが望まれるんじゃないですかね。いや、別に宣伝ではないですが。
私は昔、プロレスラーになりたいと思っていました。昔のプロレスの本とかを見ると、技の紹介などのページには「鍛えたレスラーだけができることなので、マネしないでくださいね」といった注意書きが書かれていたものです。今は、そういう話は出てこないと思います。あの頃は格闘家やプロレスラーに対する畏敬の念があったのかもしれません。ただ、格闘技って、そういうものなんですよ。鍛えた人間だけができるものだと思うから、むやみやたらとマネしないでくださいね。
私は子供の頃プロレス大百科とかを見て、プロレスや格闘技は、鍛えた人間にしかできないものである、ということが頭に刷り込まれています。だから鍛えなくちゃ、と思いました。腹筋、スクワット、プッシュアップを徹底的にやっていました。格闘技というものはそういう基礎から体を鍛える必要があるのです。
私は「腕自慢したい人はウェルカム。道場へどうぞ」という姿勢を明言しておりますが、格闘技自体が、非常に本当に荒くれ者というか、力を持て余した人にとっては良い活動だと思っているからです。ただし、安易に試合を組ませたりしてはならない。素人の参加者を募集し、格闘技の大会をするのであれば、きちんと応募者の力量はちゃんと精査すべきでしょう。この2人のマッチメークであれば、実力差が少ない、この2人は明らかに力量が違うから闘わせてはいけない……とかそういったことも考慮しなくてはいけない。ある程度レベル感を合わせていくようにしないといけません。
文/AbemaTIMES編集部