日本から3選手が出場したことでも話題になったUFCシンガポール大会(6月17日)は、期待を裏切らない内容になった。
日本勢のトップバッターとして登場した井上直樹は20歳の新鋭。これがUFC初陣だ。フィリピンのカールス・ジョン・デ・トーマスと対戦した井上は、世界最高峰の舞台でも持ち前の“常に一本を取りにいく寝技”を披露。1ラウンドはバックからチョーク、腕十字を狙い、2ラウンドになるとパンチでも主導権を握って完全に試合を支配する。
ラウンド終盤にはまたも腕十字。トーマスは気持ちが切れた状態に見えた。とはいえ、それでも粘りに粘るのがUFCに上がってくる選手のポテンシャルなのだろう。井上は3ラウンドも最後まで攻め続け、一本勝ちこそ逃したものの判定3-0で完勝。UFC初戦を飾った。
続いて登場した佐々木憂流迦は、ここまでUFC2勝3敗。前回の試合では敗れており、連敗は避けたい状況だ。だが試合はジャスティン・スコギンズのペース。開始早々ジャーマンスープレックスのように投げられ、パンチでもダウンしてしまった佐々木。グラウンドで下になり、挽回できないまま1ラウンドを終えてしまう。
2ラウンドもバックキックで倒れたところを上に乗られ、苦しい展開。しかし粘りに粘って上を取り返すと、すぐさまバックを奪う。ここからの攻撃は佐々木が得意とするところ。胴体を4の字フックで固めると鮮やかにチョークを決め、逆転勝利を収めた。
これで日本人2連勝。劇的な展開だ。佐々木は試合後、レイ・ボーグとの対戦と9月の日本大会出場をアピール。こうなると日本人3連勝が見たかったが、そう簡単にはいかないのがUFCの厳しさだ。修斗、PRIDE、戦極と時代を築いてきた五味隆典は、連敗脱出をかけてジョン・タックと対戦したものの、1ラウンドわずか1分12秒でチョークにより一本負け。これで五味のUFC戦績は4勝8敗。今回で4連敗、しかもすべて1ラウンドでの負けとなる。
試合前、「海外でやるのはこれが最後かも」、UFC日本大会で「UFCは最後にしたい」と語っていた五味。長く見続けてきたファンには切ない結果になった。しかし、一方で佐々木、井上が今後への期待を抱かせてくれたのも確か。世界最高峰の舞台での、日本人ファイターの挑戦は続く。