アメリカのプロレスと言えば、世界最大のプロレス団体であるWWEが真っ先に思い浮かぶのではないだろうか。2001年1月にアメリカの第三団体だったECWの全ての権利を買い上げ、同年3月には対抗団体だったWCWも買収、アメリカのマット界は事実上WWEの独占状態となった。WWEは、世界170カ国で有料放送を展開し、推定視聴者数は10億人とも、まさに世界規模の人気を誇っている。
現在アメリカのマット界で独占状態になっているWWEに対抗しうる団体は、業界第2位のプロレス団体であるインパクト・レスリング、新日本プロレスと提携を結ぶROHなどがある。
2002年、ジェリー・ジャレットとジェフ・ジャレットの親子によって創設されたインパクト・レスリングは、かつてはNWAに属してNWA-TNAと呼ばれていたが、後にTNAのみとなり、2017年2月に団体の名称をTNAからインパクト・レスリングに変更した。
インパクト・レスリングには、元WWE選手や元WCWのスターが多く所属し、Xディヴィジョンと呼ばれる6角形のリングを導入するなど斬新な試みを行うのが特徴だ。2005年10月からは9月までWWEの「RAW」を放送していたSpike TVが「TNA iMPACT!」の放送を開始してTV放送の面でもWWEを追撃し始める。同年9月25日には、その1ヶ月前にWWEを退団したばかりのカート・アングルとの契約を電撃発表した。
2009年10月27日、ニューヨークでの会見で、ハルク・ホーガン、エリック・ビショフと契約を結んだことを発表し、2010年1月4日にはかつてWWEとWCWの間で行われていたマンデー・ナイト・ウォーが一夜限りの復活。その放送にはホーガン、ビショフ、リック・フレアー、スコット・ホール、Xパック、さらにはWWEから離脱していたジェフ・ハーディーも登場した。
現在のインパクト・レスリングのヘビー級のトップは、WWEや総合格闘技で活躍したボビー・ラシュリーと、アルベルト・デル・リオのリングネームで昨年までWWEで活躍していたアルベルト・エル・パトロン。他にもロウ・キーやムースなど日本でもおなじみの選手が活躍している。2017年2月からはプロレスリング・ノアと提携をスタートさせ、今後インパクト・レスリングの選手を日本で観る機会も増えることだろう。
WWE、インパクト・レスリングに次ぐ第3のプロレス団体として注目を集めているROHは、2002年に創立され、熱心なファンが多いことで知られている。ROHのレスリングの特徴としては、高度なレスリング技術が挙げられ、ギミック、マイクパフォーマンス、ストーリーラインに重きを置く前述の2団体と差別化を図っている。
2006年4月には、WWEがレッスルマニアを開催する同時期に同じシカゴで興行を開催。3日間で約3500人を動員し大成功に終わった。以降、レッスルマニアと同時期に同じ都市でROHが「裏レッスルマニア」大会を行うことが恒例となっている。
2014年2月、日本の新日本プロレスと業務提携を結んだことを発表し、それ以降互いの所属選手をPPV等の大型興行に参戦させる深い友好関係にあり、G1 CLIMAXやBEST OF THE SUPER Jr.等の長期シリーズに参加するROH所属選手も多い。
ROHの特徴はジュニアやヘビーのくくりがなく、無差別級の闘いが繰り広げられているところで、世界最高のタッグチームを自負するヤングバックス(マット・ジャクソン&ニック・ジャクソン)、前IWGPタッグチャンピオンのウォーマシン(レイモンド・ロウ&ハンソン)、元WWEでBULLET CLUBに所属するCodyなど魅力的な選手が日本を意識したハードな試合を展開している。
アメリカには他にも新日本プロレスで活躍するリコシェなどが参戦するPWGや、デスマッチ主体のCZWなど、インパクト・レスリングやROHには及ばないものの数多くのプロレス団体が群雄割拠している。この中からWWEの牙城を脅かす団体が出て来るのか? 今後も非WWEのプロレス団体に要注目だ。
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