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 バリアフリー研究所代表の木島英登氏が、奄美空港でバニラ・エア機のタラップを自分の腕だけで登ることになった問題が、大きな議論を呼んでいる。

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 果たして日本は障害者への対応が遅れている国なのだろうか。29日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、木島氏も生出演、一緒に議論した。

 東京バリアフリー協議会理事長の齋藤修さんは、15年前の交通事故が原因で車椅子生活となった。街に出ると、健常者は全く気が付かない、ちょっとした坂道や道路の凹凸が気にかかる。「頭に振動を与えちゃいけない人もいる。そういう人はこういう所は向かない」。

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 障害者用に作られたトイレにも、不便を感じることがあるという。ドアに取っ手がないと開けるのにも一苦労だ。苦労して開けても、入る前に閉じてしまう構造になっているドアも多いと感じている。

 バリアフリーを推進することが本業の木島氏は「日本が遅れているというわけではない。駅にエレベーターがついていて、障害者対応のトイレもたくさんある。設備の面では進んでいる」と話す。一方で、「杓子定規であったり、心の面やサービスの面に課題がある」と話、「一つのアイデアとしては、当事者意識を持ってもらうこと。自分に関わる問題なら、人々は当然関心を持つし、理解を示す。海外旅行の経験で言うと、車椅子で動きやすい街にはベビーカーが多い」とした。

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 バリアフリーな施設や製品の設計・開発などを行う株式会社ミライロのユニバーサルマナー講師・岸田ひろ実氏は、街中で障害者を見かけた時に「何かお手伝いできることはありますか」と声がけをすることの重要性を指摘する。

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 岸田氏は「日本社会でも障害のある方、何か不自由を感じている方が外に出る機会が多くなると思う。ハード面もすでに整備されていっているが、さらに2020年のオリンピック・パラリンピック開催を機に、整備はさらに進むと思う。企業、行政機関、教育の現場で、障害者だけでなく、高齢者やベビーカー利用者などにどう接していけばいいのか教えて欲しいという声をたくさんもらっている」と話した。

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 社会課題を体験するツアーを企画しているリディラバ代表の安部敏樹氏は「健常者が車椅子に乗ってみればわかる。ツアーで5、6年やってきたが、コンビニの棚の上の方に手が届かないことなど、車椅子に乗っている人の目線や不便に感じることにそこで気がつく。ハード(設備)の面よりもソフトの面=認識の部分を変えていく方が安上がりだ」とした。

■「障害者差別解消法」とは

 今回の問題の背景には、去年4月に施行された障害者差別解消法という法律の存在がある。趣旨は、「障害があってもなくても、みんなが生きやすい社会を目指そう。誰かが不自由だなと思うことに対して社会全体が気づいて対応していこう」というもので、車椅子を理由に入店を拒否した場合、違反とみなされる。

 バニラ・エアの対応に驚いた木島氏も、この法律にもとづき鹿児島県と大阪府の窓口に相談している。一方で、問題となった奄美空港は、バリアフリー法が義務付ける「1日の利用者3000人以上」を満たす空港ではない(昨年の1日平均利用者数は1850人)。木島氏は「できる限りでお手伝いをしてくれたらいいのに、法律で義務付けられていたらする、されていなかったらしないというのは寂しい」と話す。

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 生まれつき両足に障害があり、障害者支援のニュースサイト「プラス・ハンディキャップ」の編集長を務める佐々木一成氏は「今は法律の施行後の過渡期。また、あくまでも"努力義務"なので、強制することはできないし、まだまだ至らない事業者も多い。それに対し障害者である僕らも一つ一つに目くじらを立てるのではなく、寛容さを持って企業努力を見守り、本当にできてなかったら指摘するとか、大人な対応が必要」と指摘する。

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 安部氏は「平等な社会を作るためのコストを誰が負担するのか、ということも議論した方がいい。国民的な合意のもと、法律で決めたことなので、税金でどこまで負担できるかということも考えなければならない」と問題提起した。

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 日経ビジネスの柳瀬博一氏は「LCCに限らず、エアラインや鉄道会社は、全ての人が同じレベルで利用できるよう積極的に対応したほうがサービスレベルも企業の競争力も上がり、結局は企業の利益になる。アメリカの企業が一番よくやる手法だが、サービスを改善したときには、真っ先に木島さんを招待するだろう」とした。

■木島氏「誰に対しても優しい社会になればいい」

 木島氏は「日本は普通が好きで、"標準"を求める雰囲気がある。だから僕が居心地いいのはブラジルやアメリカなど、多民族の国。ごちゃまぜで、LGBTの人も含めて、色んな人がいていいんだよという雰囲気がある。バラエティに富んでいれば、それぞれの違いも希薄されていいのかなと思う」と話す。

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 そして、「"障害者への思いやり"という言葉が希薄になっていくのも、むしろいいことだと思っている。僕も手助けされることが多いが、逆に僕が手助けできることもある。誰でも年齢や環境など、色々な理由で困ることがある。気軽に助け合えたらいいのになと思う。障害がある人にだけに優しくするのはおかしな話で、誰に対しても優しい社会になればいい」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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