7月28日、『関根勤が語る:Krush ベストバウト』(AbemaTV)が放送された。番組では関根が格闘技イベント『Krush』の数々の試合の中から13試合をピックアップし、その理由を熱く語った。
関根は『Krush』の魅力について、はじめは5ラウンド制だったが3ラウンド制に変わった点を挙げ「1ラウンドからアグレッシブにいく、そうするとKOにも結び付く」と、試合運びに変化が起きたのだとして「見ている方も面白い、選手もより技術を磨くようになる」と、相乗効果について解説した。
そんな関根がまずベストバウトに挙げたのは、2013年12月14日の『Krush.35』での武尊と後藤勝也との試合だ。後藤に「武尊のパンチは僕には効かない」と挑発を受けていた武尊は「判定で勝っても試合がつまらないと次の試合がなかなか決まらない。派手に勝ったりいい試合をするとすぐ組んでくれる。だから僕はリスクを恐れずに倒しにいくんです」と語っていたとのことで、体格差を恐れずにアグレッシブに戦う姿勢を称賛。VTRでは武尊が序盤から一気に畳みかけ、右ストレートで1ラウンド勝利を収める様子を紹介した。
2試合目に上げたのは、2014年1月4日『Krush.37』でのHIROYAと西川康平との試合。関根は「パワフルなのにスムーズに攻撃が出てますよね」と、かつてHIROYAはパワフルさの中にも強引さがあったと前置きしつつ「強引さがスムーズに洗練されて、いい感じの試合してました。この時のHIROYA選手は強いですね」と評価した。試合は2ランド目でHIROYAが西川から3ノックダウンを奪い、勝負を決めている。
3試合目には2016年1月17日『Krush.62』の平本蓮と原田ヨシキとの試合を挙げる。原田が非常にパワフルな選手なのだと語りながらも、関根は平本のパンチを「光り輝く右」と讃えつつ「第1段階を経て第2段階の平本連ですかね」と、進化を経ての勝利だと解説した。
4試合目に挙げたのは、2016年2月5日の『Krush.63』での平塚大士と大雅との試合。関根は元K-1トップファイターの魔裟斗が「大雅選手は相手との距離が長い」と評していたのだとして、“大雅流”という新しい戦い方を編み出したと語る。一方で平塚についても良い選手だと褒めた上で「期待した、いい試合になってますね」と振り返り、大雅が2ラウンド終盤に猛攻を掛けて平塚をマットに沈めた様子をVTRで紹介した。
5つ目には、2016年6月12日の『Krush.66』の武居由樹と上羽優希の試合を挙げる。引退する覚悟で試合に挑んだという上羽に対し、当時調子を上げていた武居を「スピードが凄い」「えげつない」と表現した関根。試合は1ラウンド中盤から武居が一気にラッシュを決めて上羽を完封している。
6試合目には、2016年8月20日の『Krush.68』での野杁正明とワン・ポンフェイ戦を挙げ、現在中国の格闘技界には勢いがあるのだとして「今、タイより中国の方が怖いと言われている」と、ワンは強敵だと解説。しかし「ところが野杁!」と切り返し「“平成の船越義珍”と呼んでる」と伝説の空手家の名前を挙げ、いじめられっ子から格闘技に目覚めた2人の人生を重ねているのだと熱く語りながら、勝利を収めた野杁について「65kgを渡さないで欲しい、海外勢に」と期待をかけていた。
7試合目には2016年9月30日『Krush.69』モハン・ドラゴンと斎藤武彦の試合を選出。関根はモハンを「『Krush』創世記にもいなかったタイプ」だとして「93年の『K-1』立ち上げの頃の荒々しいファイトを思い出す」と目を細める。その勢いとパワーから、かつてアーネスト・ホーストを2度倒したボブ・サップを思い出すが、さらにモハンにはテクニックがあるのだと、その強さを解説した。試合は驚異的なパワーで斎藤のガードをものともせず、パンチをねじ込んだモハンが圧勝していた。
8試合目には2016年10月15日『Krush.70』の西京春馬と大岩翔太との戦いを挙げ、西京の空間把握能力について武尊を引き合いに出し、武尊はその空間を突破する能力が凄いが、「(西京はそこを)支配する力が凄い」のだと絶賛。「撃たれて、行くといない。ゴーストみたいなもの」と例えた。試合では西京は大岩の攻撃をかわしつつ確実な一撃を与える、まさしく“ゴースト”のような戦いで1ラウンド序盤に勝利を収めている。
9試合目には、2017年2月18日『Krush.73』の、中澤純と篠原悠人の試合を挙げる。年齢差が10近くもあるベテランと若きファイターとの闘いについて、関根は「フィジカルというのはこんなに大切なのか、と教えてくれた試合」と、篠原を圧力で封じ込めた中澤の試合運びに舌を巻いた様子。試合は中澤が篠原をロープ際に何度も追い込み、勝利をつかみ取っていた。
10試合目には同じく『Krush.73』の塚越仁志とモハンの戦いを挙げて「これは最高の試合でした」と目を見開く。塚越も倒し倒されの試合をずっとやってきた選手で、KOファイター同士の試合となったが、塚越の眼前を次々と強烈なパンチがかすめていく様子について、関根は「映画『インディー・ジョーンズ』を見ている感じ」と言い得て妙な例えで解説。試合は一瞬も目を離せない乱打戦となり、塚越が3ラウンド目にモハンを3ダウンさせ、見事KO勝利をおさめている。
11試合目には2017年4月2日の『Krush.75』の左右田泰臣と松下大紀の試合を挙げる。関根は好戦的なファイトスタイルの松下を買っているとのことで、「松下に勢いで実力者・左右田を破って次のステージへ行って欲しい」と観客の心理を代弁しつつも「そしたら強かった左右田選手。フィジカルと経験の違いを感じました」と左右田にも感心しきりの様子だった。試合では左右田がK-1ファイターとしての経験の差を見せつけ、松下を文字通り殴り倒して勝利をつかんだ。
12試合目は2017年5月28日の『Krush.76』での木村“フィリップ”ミノルとKENJIとの試合を挙げる。関根は飛ぶ鳥を落とす勢いでスターダムにのし上がった木村に訪れた苦悩の時期を振り返り「本当の復帰戦。ここで負けたら本当にマズい」と背水の陣で挑んだ試合だったことを解説し、「(自身を)イチから見直して素晴らしい試合をした」と評価した。試合は1ラウンドで見事KENJIをKOし、木村は勝利直後思わず涙を流していた。
13試合目には同じく『Krush.76』の、KANAとグレイス・スパイサーの試合を挙げる。前の試合からのファイトスタイルの変化に驚嘆したという関根は、コーチやトレーナーの優秀さを称賛し「1番ビックリした。キックを50年見てて」と、KANAを手放しに称賛。試合ではKANAが軽快なステップから的確な攻撃を打ち込みつつ試合を進め、3対0の圧倒的な判定勝利を収めて“進化”を見せつけた。
全ての試合の紹介を終えた関根は、今後の『Krush』について問われると「ゆくゆくはオリンピックにも進出して欲しい」と語り、脳へのダメージはボクシングよりも少ないのだとメリットも挙げつつ「『東京都知事杯』とかやって欲しい、『総理大臣杯』とかね」と明るい未来を期待していた。