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■官邸にいると、国民の本当の声というものが聞こえにくくなる

 「街頭に立ってみると、駆け寄ってこられて、今の政権に対する不満をこれまでにない調子でおっしゃった方が相当数いた。きわめて印象的なものだった」。

 東京都議選で歴史的惨敗を喫した自民党。"ポスト安倍"との呼び声も高い石破茂氏は、現政権に危機感を感じているという。8月3日の内閣改造を前に、AbemaTV『AbemaPrime』が本人を直撃した。

 ANNの世論調査によると、内閣支持率は危険水域に突入、7月の時点で29.2%にまで落ち込んでいる。3割を下回ったのは、2012年の第2次政権発足以来、初めてのことだ。

 石破氏は「幹事長として2年、大臣として2年、安倍総理の下で働いたが、確固とした自分の信念というかアイデンティティを持っているので、それと違う考え方に対しては、かなり毅然とした対応をする方だと思う。いろんな苦難の中で、今日の自我を確立されてきたと思うし、そういう安倍政権を今日まで、国民が圧倒的に支持してきたのではないか」と指摘。

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 その一方、「福田元総理が『ここにいると、誰も本当のことを言ってくれなくなる』とよく言っていた。権力とはそういうものなんだろう。官邸にいると、国民一人一人が何を考えているのか、本当の声というものが聞こえにくくなるそうだ。自分がそういう立場になった時に、そうならない保証はどこにもないけど、今は自分の方が国民に近いんだろうなと自惚れることはある。自分が大臣の時には、周りに『大臣それ間違いですよ』って言ってくれる人をなるだけ連れてきた」とした。

■憲法改正、自民党の国会議員は一人一回、必ず見解を述べよ

 そんな安倍総理は、秋の臨時国会に自民党独自の憲法改正案を提出することを表明した。これに先立って安倍総理が提案したのは、9条の1項、2項は残したまま、新たに第3項を追加し、そこに自衛隊を明記するというものだった。石破氏は2012年、自民党が野党だった時代に発表した「自民党改憲草案」の9条の起草に関わったことから、突如飛び出した安倍総理の案に違和感を表明してきた。

 これについて石破氏は「私は自民党改憲草案に拘泥したり、何が何でもこれでなければいけないと言っているつもりはないが、徹底的に議論して草案を作って、党議決定をして、『我々には草案がある』と言って国民に一票を入れていただいて政権奪還した。9条の改正草案について言えば、ある意味で理想形だと思っている」とし、「自衛隊って何ですか?と問われた時に、私自身もいろいろな答弁をしてきました。国際法的に見れば軍隊で、国内法的には自衛隊。この両生類みたいなものは一体なんですかと。国の独立を守るのが軍隊。国民の生命、財産、公の秩序を守るのが警察だ。だから、"日本国の独立ならびに国際社会の平和に寄与するため陸・海・空自衛隊を保持する"って正面から書くのが何がいけないんですか。当たり前の話だと思います」と指摘した。

 さらに手続きについても「総理は自民党総裁として読売新聞で語られ、憲法改正賛成の方々の集会でも語られたが、自民党員に向かって語られたことはない。80人だけが参加した、たった1回の議論でコンセンサスが得られた、あとは幹部会でやればいいというのは党内民主主義とは違うと思う。自民党のコンセンサスを得られて初めて他党に対して、いろんな説得ができると思う。私は、その努力をまず挟んで欲しいと思う。コンセンサスって、何年もかけて、朝の8時から夜の10時、11時まで徹底した議論をして得られるもの。だから消費税という、決して国民に歓迎されない政策だって、小選挙区制という自民党にとっては決して有利とは言えない選挙制度だって、コンセンサスを得られた。それが自民党のカルチャー。お盆が終わったら全議員に"集まれ、この問題について一人一回、必ず見解を述べよ"ということがなぜできない。そうすることが自民党の国会議員たるものの、有権者に対する責務だ。スピード感が大事だからって、手続きを崩していいことにはならない」と、改憲を急ぐ安倍総理や党内の改憲勢力を牽制した。

■次の防衛大臣は「自衛官一人一人が共感する人であってほしい」

 安倍政権には、南スーダンPKOの日報問題への対応に代表される、稲田防衛大臣の言動も大きな影を落としてきた。そもそも稲田氏が防衛大臣として適任だったのか。また、後任はどのような人物が良いのか。

 石破氏は「稲田さんであれ誰であれ、突然全く知らない分野で大臣をやれ、と言われたら、それはなかなかできないでしょう。稲田さんが知識不足だったかどうかは知らないが、実力部隊の扱いかたを間違えたら大変なことが起きる。彼女であれ誰であれ、防衛大臣を務めるなら、法律を知っている、兵器を知っている、日米安全保障体制とは何か知っている、これ知らないと務まらないということの当たり前」と話す。

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 「特に防衛省・自衛隊というのは、他の省庁と違って実力部隊を持っている。さらに日本では法律に書いてあることしか自衛隊はできないから、自衛隊法を知らなきゃ使いようがない。他にも、例えば戦闘機のF-15とF-2って、イージス艦とその他の護衛艦も、90式戦車と10式戦車も似たようなものに見えて全然違う。防衛大臣経験者なら、それくらいは基礎中の基礎だからみんな知っている。外国の防衛大臣もみんな知っている。そして何よりも、自衛官一人一人が共感する人であってほしいと思う。全国の部隊に行くと、内閣総理大臣、防衛大臣、統合幕僚長、事務次官、陸海空の幕僚長の写真が掲げてある。それが実力組織。"この人たちの命令で俺たちが動くんだよな"という信頼感が必要だと思う」。

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 防衛大臣人事の話題になると、常に自身の名前が取り沙汰されることについては「防衛って言うと石破っていう名前しか出てこないのはおかしくないですか。自民党の育成システムはそんなにいい加減じゃない。人知れず努力して、能力を持った方々はいらっしゃると思う。"私しかいない"なんて、思い上がった考えを持ったことは一度もない」として、自身の就任の可能性については明言を避けた。

■日本国が本当の意味での独立国家として、50年先も100年先も続くこと

 「政治家としての夢、成し遂げたいことは何か」という質問に対して、「日本国が本当の意味での独立国家として、50年先も100年先も続くことだ。抽象的なことを言っているみたいだけど、防衛だってそうだ。"いざとなったらアメリカが"って言うけど、日本でできることってもっとたくさんあるはず。だけどそれをやらないまま来ていないか。社会保障もそう、エネルギーでもそう、食糧でもそうだ。日本が国家として、外国の助けをなるべく借りることなく、やっていけるという国を作りたいと僕は思っている」と語った石破氏。

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 夢の実現のための"次のステップ"について「防衛とか農林水産とか、あるいは地方創生とか大臣としてやってきたし、それなりに自負もある。だが、ペラペラと一通りの答弁はできても、本質を理解できていない分野もある。そんな細かいディテールまで分かる必要もないけど、AでもBでも立論できる場合に、正しい方はどっちかという判断ができる能力を持ちたい」と答えた。

 政治学者の佐藤信氏に「総理大臣になるためには、正しい判断ができる分野をなるべく増やさなければいけないと考えているように見える。かなり高いハードルを設定されているのだなと思った。スペシャリストではない領域の閣僚を経験していきたいというつもりなのか」と問いに石破氏は「大臣職はそんなことのためにやってはいけません。経験したいだけであれば、政務官や副大臣で経験しないと。その分野の最高責任者たる大臣というポストに、経験したいからという考えで務めることは全く正しいと思わない」と話し、やはり入閣への明言を避けた。

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 「野心が全くない人は政治家なんてやらない」「自民党や政権の支持率が下がるということは、それだけ国が危ういということだと思っている。今、自分にできることは何なのだろうということは、常に問いかけていかないと無責任だ」と語る石破氏。内閣改造、憲法改正など、今後もその言動が注目される。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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