頼れる若き左腕が帰ってきた。7月12日の広島戦から左肩機能不全で約1カ月間戦線離脱した横浜DeNA浜口遥大投手が、8月13日の復帰戦で見事な虎狩りを見せた。ルーキーながらローテーションを守り7月までに6勝を上げていたが、疲労の蓄積も考えられ、首脳陣は早めに登板を回避させノースローから万全に調整してきた。「大きな声ではいえないが阪神ファンだった」という浜口は阪神戦ではとくに気合が入るという。復帰戦は6回１失点の好投で7勝目を上げた。これで阪神戦の防御率は圧巻の0.93で3戦3勝だ。
復帰戦はランナーを背負う場面があり、2回に先制の犠牲フライを許したが逆転勝利。浜口の魅力といえば強心臓でピンチを乗り切る粘り強さにあるだろう。神奈川大学時代には、リーグ優勝を果たし、全日本大学野球選手権で準優勝とベスト4に貢献している浜口。日米大学野球に出場するなど日本代表としても活躍してきた。大学4年時には日本代表戦でチームメイトだった山崎康晃を応援するため、横浜スタジアムに駆けつけたこともある。球場が盛り上がる、観客の“ヤスアキジャンプ”を見て「いつか自分もこんな選手になりたい」と思っていた。復帰戦の横浜スタジアムでは浜口を待ちわびたファンの大声援に包まれた。神奈川大学出身ということもあり、地元のファンも多い。「連続フォアボールを出すかと思えば連続三振で切り抜ける、ドキドキのピッチングがたまらない」と大学時代からのファン。
球が荒れながらも要所で抑えるスタイルは今も変っていない。大学時代の与四死球率は5点台と制球力に難があるといわれていた。プロに入ってからもフォアボールの多さがやや目立つ。それでも勝てるのは、キレのあるストレートに織り交ぜる魔球のチェンジアップでピンチでも腕を振り三振を奪えるところにあるだろう。大学時代、対戦相手が「球が止まったように見える」「突然消える」と口にするほどのチェンジアップで三振の山を築いてきた。浜口の今シーズンの奪三振率は10.02と高い数字を誇る。セ・リーグで規定投球回数に達している投手で最も高い奪三振率を残しているメッセンジャー（阪神）でも9.52だ。
今シーズン浜口が満塁で奪った三振は6個と追い詰められても勝負強さを見せている。そこがファンも目が離せない魅力でもあるだろう。新人での2桁勝利も見えてきた。新人王の資格がある投手でほかに勝ち星を重ねているのは、5勝5敗の中日の鈴木翔太と4勝6敗のヤクルト星知弥などがいるが、浜口が頭ひとつ飛び出している形だ。野手の新人王候補は、ショートのレギュラーをつかみ.272の打率を残している京田陽太（中日）くらいで、現状の成績からするとこの2人の一騎打ちになりそうだ。（データはすべて8月24日現在）
9月は現在2位の阪神との横浜DeNAの直接対決が8試合もある。初のCSホーム開催に向け、阪神戦が重要な戦いになることは間違いない。虎キラーの若き左腕が立ち向かい、CSホーム開催と新人王を手にすることはできるのか。浜口から目が離せない。【山口愛愛】
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