デビュー1年目で将棋界の第一人者を破った若武者が、熟練した守りと粘りの沼にダイブする。将棋の若手棋士7人と40代のトップ棋士がチーム戦で戦う「若手VSトップ棋士 魂の七番勝負」(AbemaTV)で、近藤誠也五段(21)が対戦相手に木村一基九段(44)を指名した。プロ歴の浅い順に若手棋士がトップ棋士を選ぶルールの中、“千駄ヶ谷の受け師”の異名を持つ木村九段について、近藤五段は「力強い受けを体感したい」と決意を語った。デビューから高勝率をキープする若手棋士が、年間勝率8割&60勝を達成したこともあるベテランに挑む。
攻め切るか、守りつぶすか。2人の対局は実にシンプルな構図になる。近藤五段はデビュー1年目で、将棋界のレジェンドとも呼ばれる羽生善治二冠(46)に勝利する金星を挙げ、一気に名を広めた。対する木村九段は2001年度に勝率1位(0.8356)、最多勝利(61勝)の好成績を挙げ、羽生二冠と2人しか達成したことのない年間勝率8割&60勝の偉業を達成した。近藤五段が若々しく攻めるところを、守りと粘りが信条の木村九段がどう受け止めるのか。息切れした方が負けになる、地力が試さされる勝負になる。
息苦しい展開が予想される対局だが、近藤五段はむしろその体験を望んでいる。「木村九段の力強い受けを体感したいと思います。小学生名人戦に出場した時、解説者が木村先生で。勉強方として、たくさん指した方がいいよと言ってもらいました」と、少年時代の記憶に残る先輩だからこそ、その本領を肌で感じたいを思っている。「木村先生はいつも分厚い陣形を築き上げている。受け将棋、力強い将棋が持ち味の方なので、自分らしく攻め将棋を指したいと思っています」と気合は十分だ。
若手棋士が、少年時代・奨励会時代に憧れた40代のトップ棋士と戦い続ける、今回の七番勝負。小学生名人戦の時に大先輩から声をかけられた近藤少年が、青年になりどこまで戦える力をつけたのか。約10年の時を経ての対局が今、実現する。