将棋界に2人しかいない10代の若手棋士が、実直なトップ棋士と盤上の駒で初めて“会話”する。将棋の若手棋士7人と40代のトップ棋士がチーム戦で戦う「若手VSトップ棋士 魂の七番勝負」(AbemaTV)で、増田康宏四段(19)が対戦相手に三浦弘行九段(43)を指名した。プロ歴の浅い順に若手棋士がトップ棋士を選ぶルールの中、羽生善治二冠(46)が七冠独占の全盛期に、棋聖のタイトルをもぎ取った実力者・三浦九段について「本格的で、僕が一番好きな将棋を指される先生。まだ話したこともありません」と、盤を挟んで初めて対面するという。2016年の新人王戦で優勝した実績を持つ増田四段が、本格派の先輩棋士の胸を借りる。
将棋界のプロ棋士は約160人。関東と関西に分かれ、また所属する階級やリーグなども異なることから、ほとんど会話や面識がないことも珍しくない。24歳も歳が離れた先輩後輩であればなおさらだ。対局や棋譜などで三浦九段を知る増田四段だが「話したこともなくて。なかなかトップの先生方と当たれる機会もないので、指したことのない先生と指したかったです」と、指名の理由を明かした。お互い棋風は居飛車党。棋譜さえあれば、棋士としての性格が読み取れるのも、将棋ならではだ。三浦九段の強さについては「中終盤の正確さでしょう」。対極については「相居飛車の力のこもった将棋になると思います」と予想した。
同じ10代の中学生棋士・藤井聡太四段(15)の大活躍に、増田四段も大きな刺激を受けた1人だ。自身も中学生でのプロデビューを期待されながら、あと一歩で逃した過去がある。将棋ソフトでの研究を積極的に取り入れ、伝統の戦型・矢倉についても「ソフトが出てきて、矢倉が否定されました。今までの経験があまりいきなくなってきているので、世代交代はしやすくなってきたかなと思います」と、得意の戦型・雁木で力強く突き進む構えだ。
対局企画の構図は若手棋士VSトップ棋士。それでも増田四段は「若手が活躍すれば将棋はもっと盛り上がると思う。自分も本当に頑張って藤井四段と競り合っていきたいです」と、一気に若手陣の主役に躍り出る気合を見せている。世代交代と若手のトップ格。“両取り”を狙う増田四段の目が鋭く光っていた。
(写真提供:日本将棋連盟)