アメリカでは、20以上の州で医療大麻が合法化された今も、子供の摂取に関しては賛否両論ある。ガンと闘う8歳のマケイラのもとを訪ねた。
「大麻で私がどんな気分になるか教えてあげる。疲れた感じがしてお休みしたくなる。それにすごくお腹がすく」
(ガンと闘う当時8歳のマケイラ)
2012年、マケイラの胸に大きな腫瘍が発見された。化学治療の効き目が見られないと、担当医に全身の放射性治療と骨髄移植を勧められた。しかし、マケイラの両親は実際はもっといい方法があると分かっていた。その日初めて大麻オイルを摂取させると、6日後には症状が改善した。
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医療大麻は20以上の州とワシントンD.C.では合法だ。しかし、子供に対しての使用に関しては議論が続いている。「てんかんや自閉症の特効薬となり、化学治療の副作用も抑えられる」という主張もある一方で、成長期の体には長期的な影響が懸念されるという意見もある。
オレゴン州のペンドルトンに住む8歳のマイケラのもとを訪れた。彼女はガンの治療のために大麻成分のTHCを大量に摂取している。マイケラの家族は、大麻による治療効果でマイケラの腫瘍が小さくなると信じている。マケイラは毎日、9.45グラムの医療用大麻に相当する水パイプ約10回分を1日に2回摂取している。マケイラの父ブランドンは「量が多すぎると非難する人が多く、ジョイントに比べて精神的な作用も強い」と話す。マケイラ本人は「飲むと力が湧いて、楽しくなる」という。
(マケイラの部屋。おもちゃや本が置いてある)
子供への大麻投与の争点となるのは、量である。マケイラは精神作用など全ての面を考慮した上で、許容できる最大限のTHCを摂取している。医療用の大麻の種類は実に豊富で「カンナビノイドを多く摂取すればするほど治療効果も高く、化学療法で傷ついた神経を守ってくれる」と父ブランドンはいう。マケイラは医療用の大麻食品も好み、お菓子などに混ぜて摂取している。
マケイラのTHCオイルはきちんとした製造元があるわけではなく、個人がガレージで手作りで製造している。大麻供給者のストーニー・ガール氏は「連邦政府を含め、大麻の子供への投与に反対しているけれど、影響をあれこれ心配するよりも、まず命を救うことが大切」と考えている。
マケイラは大麻オイルだけではなく、従来の抗がん剤も同時に服用している。大麻を服用する前は、元気も食欲もなく痩せていたが、大麻を与えると「お腹がすいた」と笑い、元気になったそうだ。父ブランドンは「ガンはどうすることもできないが、放射線治療を行うか、大麻を使用するか選択することができる。しかし、だれもが同じように大麻による効果を得られるわけではない」とも語っている。
マケイラ以外にも、医療用大麻を服用する子供は増えている。マケイラよりも年下の男の子、エイブルがそうだ。彼は腎芽種のステージ3で動き回ったりすることはもちろん、毎日ほぼ何もできずに寝転んでいるだけだった。医療用大麻を摂取したところ、普通の子供のように遊び回ることができるようになった。
合法化の口実ではなく、本物の“医薬品”が必要
医師の大半は大麻がガンを治すとは考えておらず、子供への投与はリスクが大きいと思っている。事実マケイラの担当医は大麻を処方してくれず、別の医師に処方箋を出し、ポーランドの薬局で購入している。父ブランドンは代理で大麻を受け取れるケアギバーの資格を持っており、オレゴン州では患者が子供であったとしても患者1人につき、6株まで大麻を栽培することができる。
マケイラの治療は大麻栽培者・フランキーの家で始まった。フランキーは医療大麻の可能性を信じて、オレゴン州に移り住み、医療用大麻を栽培。マケイラのような医療大麻を求める人々に処方している。大麻の効果は人によってさまざまで、フランキーによると「全く効かない人もいればマケイラのように効果が目に見えて分かる人もいる」という。フランキーはマケイラの変化を目の当たりにして、大麻の効果に確信を高めた。
フロリダ大学麻薬政策研究所所長のケビン・サベットに電話で話を聞いた。ケビンは「大麻の薬としての価値はたしかに見出すことはしているが、それを吸ったり食べたりする必要はない。現状はまるでふざけている。モルヒネの効果を得るためにアヘンを吸ったりはしない。100年前にアヘンからモルヒネを抽出したように嗜好品ではなく医薬品を作らないと。もっと本腰を入れて取り組むべき課題だ」と話す。「国家レベルでの改革が進まない理由は?」と聞かれるとケビンは「これは研究員、薬剤師、医者の職務だ。裏庭や地下室の製造者ではない。大麻合法化の口実ではなく、本物の医薬品が必要だ」とコメントした。
大麻の服用によってマケイラは回復し、日々を楽しく過ごしている。子供がガンと診断されるのは想像を絶する苦しみだ。マケイラと家族は大麻によって活力を取り戻すことができたという。しかし、大麻の医薬品・治療薬としての実用性は未だ実証されていない。
(AbemaTV/Documentaryチャンネル『子供たちと医療大麻の未来』より)
原題:Stoned Kids(2013)
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