中学生棋士・藤井聡太四段(15)の活躍、第一人者の羽生善治棋聖(47)が王位、王座のタイトルを続けて失うなど、将棋界で大きな世代交代の流れがある中、今年度においてトップ級棋士相手に圧倒的な勝率を誇っている棋士がいる。豊島将之八段(27)だ。竜王戦1組、順位戦A級と、ビッグタイトルの最高峰に所属しながら、その勝率は0.885(2017年10月13日現在)。次のタイトル候補として真っ先に名前が挙がる存在だ。
タイトル挑戦3回、タイトルホルダーらが参加する将棋日本シリーズで優勝1回。同年代の佐藤天彦名人(29)、菅井竜也王位(25)らがいる中、タイトルという点に置いては遅れを取ったが、その実力はファンを含め将棋界の誰もが認めるところだ。若手棋士の1人も「次は豊島先生がタイトルを取るんじゃないでしょうか。勝率もすごいですが、相手が相手ですからね」と話した。2017年度のランキングでは、2位の藤井聡太四段を上回る勝率でトップを走っている。
今年度、豊島八段は22勝3敗(2017年10月13日現在)だが、若手棋士が語ったように、対戦相手が強豪ばかりだ。順位戦A級では無傷の4連勝中だが、行方尚史八段、羽生棋聖、佐藤康光九段、前年度名人に挑戦した稲葉陽八段に勝利した。その他の棋戦でも5月には佐藤名人、渡辺明竜王を相手に連勝。8月には藤井四段の挑戦を受け、思惑どおりの千日手から、指し直しの局で快勝した。
棋士の強さを示すものとして、ファンの間で定着しているものの1つが、レーティングだ。勝てば上がり、負ければ下がるランキングのようなものだが、より強い相手とされる者に勝てば大きく上がり、逆に弱いとされる者に負ければ大きく下がる。段位とは異なる指標の中で、豊島八段を現在1位としているレーティングも多く見られる。「無冠の強者」として、次のタイトル候補と名が挙がるのも必然だ。
今年度から8大タイトルに加わった叡王戦を除く7つのタイトルを、6人の棋士が保有する“戦乱”状態の中、無冠の豊島八段がこの中に加わるのは、今の調子を見れば可能性は高い。2015年度の棋聖戦以来となるタイトル挑戦は、どのタイトルか。勝率とともに見逃せない。
(写真提供:日本将棋連盟)