「パレスチナに自由を」「私たちに銃はいらない、人々を啓発するのが目的だ」そう語るのはパレスチナの開放を訴えるデモの参加者、ナトレイ・カルタのユダヤ人だ。
ミレン・ラーソンは、北ロンドンのユダヤ人地区にあるユダヤ教の超正統派を訪れた。ミレンはナトレイ・カルタの英国支部へ向かう。反シオニズムとイスラエルの解体を唱え、他のユダヤ人からも反感を買っている。「恥さらし、それでもユダヤ人か」そんな怒号が飛び交っている。前イラン大統領やハンガリー極右政党と交流があり、過激派のレッテルを貼られているナトレイ・カルタ。なぜそこまで信念にこだわり、同胞の非難さえ受け入れているのか。彼らの招待を受け、ミレンは組織の内部に飛び込んだ。
(北ロンドンのユダヤ人地区を訪れたミレン・ラーソン氏)
ナトレイ・カルタの英国支部、ラビ・ベックに地域の組織の規模について聞くと「シオニズムと積極的に戦うのは数百人だが、シオニズムに反対する人間は数千人存在する」と答える。
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シオニズムとは、ユダヤ人国家建設運動とその思想のことで、20世紀初頭に他国の支持を得て、1948年にパレスチナにイスラエル国が誕生した。しかし、ユダヤ教の超正統派は当初から建国に反対していた。世俗主義を恐れただけでなく、建国は救世主の到来まで待つべきだと信じている。
やがて正統派の一部は態度を軟化させ国家の恩恵にあずかった。一方で反対の立場を貫く者もいる。その中でも最も過激な組織がナトレイ・カルタだ。広報活動に積極的なラビ・ベックは弟子のラビ・ブライヤーとともにチラシの配布に向かった。
(ナトレイ・カルタの英国支部、ラビ・ベック氏)
チラシの内容は、イスラエルに反対する理由が書かれており、弟子のラビ・ブライヤーによると「強力なイスラエルのプロパガンダに対抗するために必要」だという。ラビ・ベックは「ナトレイ・カルタとは『聖都の守護者』。ユダヤ教の説く正しい道にみんなを導こうとしている。例えば、女性の服装が適切出なかったり、教えに反する商品が店に並ぶときもある。そんなときはこのではやめてくれと注意する。角が立つときもあるが、最終的には理解してもらえる。気に入らなければこの地区から出ていけばいい。ここに居座る義務はない。正しい道を説くのが私の義務だ」と語る。
シナゴーグに貼られている「ユダヤ人はシオニストにあらず」という張り紙はすぐにはがされる。ミレンは超正統派のシナゴーグの中に入った。このユダヤ人地区でシナゴーグは何度か襲撃を受けた。ラビ・ベックは「ユダヤ人は私たちのことを狂信的だとか、過激だとか話す」と語る。マスコミも見向きもしないため、考えを伝えることができないと嘆いている。
シナゴーグの中は反シオニズムについての書物が数十点と聖典が飾られている。聖典には聖典トーラーの王冠と十戒の最初の部分が書かれている。ミレンが「イスラエルは十戒に背いていますか?」と聞くと、ラビ・ベックは「『殺すなかれ』と『盗むなかれ』に違反した。信仰の根底は神への信頼だ。追放が神の御心ならそれに従う。救世主が現れるまで建国は待つべきだ」と答えた。ミレンが続けて「つまり、イスラエルは十戒に背いていますか?」と投げかけると、ラビ・ベックは「当然だ」と断言した。
ナトレイ・カルタは信仰の守護者を自認するが、他のイスラエル派のユダヤ人たちはどう見ているのだろうか。10月20日(金)夜11時、AbemaTVのDocumentaryチャンネルでは『VICE』を放送。ナトレイ・カルタの取材後、ミレンはユダヤ教革新派にインタビュー。激しい公論の行く末はどうなるのか、ぜひお見逃しなく。
(AbemaTV/Documentaryチャンネル『イスラエル解体を目指すユダヤ教超正統派団体 ナトレイ・カルタ』より)
原題:The Ultra-Orthodox Jews Who Want to See Israel Dismantled(2016)
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