「今までは練習をたくさんして、いつも以上に練習した時はいい演技ができたから……たまたまかもしれませんが、試合の結果・内容に報われていた部分が自分の練習につながっていたんですけど、これだけ練習してこのような演技をしてしまったというのは、本当に練習量以外の問題があるとしか思えない」

 初出場した一昨季の世界選手権(ボストン)で、ショートプログラム4位につけながらフリーで失速、総合7位に終わった宇野昌磨。涙の跡が残る顔でミックスゾーンに現れて語ったのは、練習量が試合での滑りに直結しなかったことへの悔いだった。

 宇野は一昨季にシニアデビューして以来、快進撃を続けてきた。次々と新しい種類の4回転を習得し、昨季の世界選手権では銀メダルを獲得。優勝候補のひとりとして、初めての五輪である平昌五輪に臨もうとしている。

 宇野の躍進を支えてきたのは、豊富な練習量だ。スケート関係者が「大丈夫?っていうくらい練習する子」と評するほど、ひたむきに練習を積み重ねてきた。幼い頃から表現力には定評があった宇野だが、ジュニア時代はトリプルアクセル習得に苦しんだ。目先を変えて4回転を練習しはじめたところ跳べるようになり、その後トリプルアクセルもものにしたという経緯がある。踊ることについては天性のものがあると同時に、ジャンプについては決して天才肌ではなく、努力で身につけてきたのが宇野なのだ。その結果世界ジュニア選手権を制し、満を持して上がったシニアでも、世界のトップレベルへと上り詰めた。

 だからこそ、必死で練習してきた4回転で転倒し、狙える位置にあったメダルを逃した初めての世界選手権での言葉には悲痛さがにじんでいた。初優勝した昨季の全日本選手権でも「試合への持っていき方がいまだによく分からないですし、なんとか気合いで乗り切っているという感じがある」と語っており、宇野にとっては練習の成果を試合で出すことがなお課題であり続けていたようだ。

 しかしその後の世界選手権で表彰台に立ち、昨季をいいかたちで締めくくった宇野は、今季に入り試合運びに自信を持ち始めていることをうかがわせる発言をしている。今季初戦・ロンバルディア杯で、歴代2位の合計点で優勝。2戦目となるジャパンオープンの前日練習で、試合への臨み方を昨季つかんだのかと問われ、「初戦はそれがうまくいきましたね」と答えた宇野は、続けて次のように語っている。

「練習してきたから絶対にできるなんてこともないですし、逆に練習してないから絶対にできないっていうこともない。2年前の自分だったらそうは思わなかったと思うんですけど、去年の1年間の成果が前の試合に出た」

 一昨季の世界選手権・フリー後、ボストン・TDガーデンのスクリーンに映った宇野の涙は、積んできたたくさんの練習を思わせるものだった。一夜明け、「意義のある失敗だったとめげずにやっていくことが、一番大事かなと思っています」と語った通りに実行し続けてきた宇野は、試合に臨む心構えを体得しつつあるようだ。

 ただジャパンオープンでは不本意な滑りに終わり、「練習でもここまで失敗することは少ない」と反省の弁を述べ「自分のコントロールができなかった」とも語っている。

「この悪かった試合を生かして、今後『あの試合があったからよかったね』と言えるような今後の取り組みに励んでいきたい」

 平昌五輪に向け、練習の成果を出し切る試合運びという課題を克服するためさらに挑み続ける宇野のグランプリシリーズは、カナダ大会から始まる。

文・沢田聡子

写真・長田洋平/アフロスポーツ

AbemaTVでは宇野昌磨選手が出場するGPシリーズカナダ大会のショートプログラムを29日に、フリースケーティングを30日に放送する。

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