強い。今期、三浦弘行九段(43)がさすがの強さを発揮している。12勝6敗(10月31日現在)。勝率.667だ。上位陣との対戦が多くなるA級棋士としては驚異的な数字とも言える。王将戦2次予選では羽生善治棋聖に勝利。棋王戦トーナメントでは、今期すさまじい勝ちっぷりを見せている豊島将之八段にも完勝した。
ご存じの通り、三浦九段は昨年、不正疑惑騒動に関連して出場停止処分を受けた(後に第三者委員会は「不正行為の証拠なし」との結論を出した)。2016年10月から同年末に至る出場停止期間の間、ほとんど駒に触れることはなかったと復帰時の三浦九段は明かしている。2月には対局復帰を果たしたが、復帰戦から4連敗。もともと1日10時間の研究を自らに課す男として知られており、ブランクを心配する声も上がっていただけに最近の復調ぶりは頼もしい限りだ。
三浦九段は1992年、四段昇段。1996年度の棋聖戦で羽生善治七冠(当時)から棋聖を奪取し、七冠独占にストップをかけたことは有名な話だ。22歳でタイトルに輝き、その後もNHK杯優勝(2002年度)、升田幸三賞受賞(2000年度)、最近でも将棋日本シリーズ優勝(2015年度)などの棋歴を誇るが、A級に2001年度から14期連続在籍したことは類いまれな実績で、大いなる称賛に値する。初年度の最終局で「勝った方が残留」の一番を制した時の相手は、今年引退した加藤一二三九段。加藤九段にとってA級最後の一局となった。2014年度に降級の憂き目に遭うが、翌2015年度に「鬼の棲み家」と称されるB級1組で即9勝3敗の好成績を収め、A級復帰を決めている。
前述の加藤九段は引退後も「ひふみん」の愛称で将棋界の垣根を越えて愛され続けているが、棋士がゆるキャラのようなニックネームで呼ばれ、親しまれるのは三浦九段の「みうみう」の方に一日の長がある。例の騒動後、どこか遠慮してしまうせいなのか、ファンが三浦九段を「みうみう」と呼ぶケースが減ったような気がする。しかし、三浦九段にとっては以前と変わらないように接してもらうことのほうが有り難いことは間違いない。
「魂の七番勝負」第6局では「本格的で、僕がいちばん好きな将棋を指される先生」と直接対決を熱望した増田康宏四段との一局。戦型選択に雁木を予告する若武者に対し、三浦九段がどのような戦い方を見せるのか。戦術面でも注目の一番となる。
◆三浦弘行(みうら・ひろゆき)九段 1974年2月13日、群馬県出身。西村一義九段門下。棋士番号は204。1987年に奨励会入り。1992年10月1日に四段昇格を果たしプロ入り。1996年度に当時の羽生七冠を破り、初タイトルとなる棋聖を奪取。NHK杯、将棋日本シリーズ、新人王戦と、棋戦3度の優勝経験もある。「魂の七番勝負」第6局(11月4日放送)で増田康宏四段と対戦する。
(C)AbemaTV