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 「最後に一言だけ、すみませんいいですか」。

 およそ1時間40分にも及んだ会見の最後に、そう切り出した小室哲哉さん。「僕たった一人の人間の言動などで日本であったりとか、社会が動くとはまったく思っておりませんが、なんとなくですが、高齢化社会に向けてであったりとか、介護みたいなことの大変さであったりとか、この時代のストレスであったりとか、そういうことに少しずつですけどこの10年で触れてきたのかなと思っているので、こういったことを発信することで、みなさんも含めて、日本をいい方向に、少しでもみなさんが幸せになる方向に動いてくれたらいいなと心から思っております。微力ですが、少しなにか響けばいいなと思っております。ありがとうございます」。

 『週刊文春』に不倫疑惑が報じられ、騒動の責任をとって引退すると発表した小室さんだが、決意に至った背景には、妻であるKEIKOさんの介護、そして自身の体調不良やストレスとの闘いがあったことも明かした。19日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、小室さんが社会に投げかけた言葉の意味を考えた。

■「精神的な支えが必要だった」

 KEIKOさんは2011年、39歳の時にくも膜下出血を発症。一命はとりとめたものの、記憶障害などの後遺症が残り、現在もリハビリを続けている。

 「職業である歌手ということで、KEIKOという存在はやっぱり大きかったと思う。そこは幸いではなく、残念なことに音楽の部分が、脳のどこの部分かわからないけれども、(音楽への)興味がなくなってしまって。そのあとカラオケに誘ったり、音楽のネットを見せたり、CDを聴かせたり、一緒に聞いたり、僕なりにいざなうということを試みたが、残念ながら音楽に興味を持つことは日に日に減ってきて。今は小学4年生くらいの漢字ドリルが楽しかったりとかで、それをすごく楽しんでやってくれたり。全てがそういうレベルというわけでは全くないが、大人の女性に対してのコミュニケーション、会話のやりとりが日に日にできなくなってきて、電話や対峙して話すことも、だんだん1時間、10分、5分、3分…と間が持たなくなってきて。非常にかわいそうだなという気持ちもあるが、そこを諦めてはいけないのが精神的なサポートだというのは重々承知であったが、何度も繰り返しの質問であったりとか、そういうことでちょっと僕も疲れ始めてしまったところは、3年くらい前からあったと思います。反面、年々仕事が増えて、日々少しずつ音楽に向かいあわなくてはならない時間も増え、どうしても僕がずっとKEIKOのサポートをすることが不可能になってきたこともありました」。

 介護と仕事に奔走する中で、自身も体調を崩し始めたという小室さん。「2年前にC型肝炎になってしまいまして、結局二人でいると二人とも病気がちというか、闘病みたいな形になってしまった」。それでも仕事をセーブせずに続けたが、去年の夏頃にはさらに突発性難聴に近い状態になったという。小室さんは会見の中で、現在も左耳がほぼ聞こえない状態であることを明かした。

 小室さんによると、そんな中で精神的な支えになったのが、今回不倫疑惑が報じられた看護師のA子さんだった。A子さんとの関係について小室さんは「体調不良で来ていただいて、女性として来ていただいた事は一度も無い。男女の関係は全く考えていない。お恥ずかしい話ですが、この5年6年男性としての能力というのがなくて、精神的な支えが必要だった。誤解を生じさせてしまった」と説明した。

■くも膜下出血の後遺症は、家族のサポートが重要だが…

 くも膜下出血のリハビリについて、京都大原記念病院神経内科の浦部博志医師は「くも膜下出血で後遺症が残った場合、リハビリしても改善には時間がかかる。家族は障害を受容し、根気強く付き合うことが求められる。何よりも家族のサポート、お互いの信頼関係が重要」だと解説する。

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 もし、パートナーに介護が必要になったとしたらー。街で聞いてみると、

 「介護のために自分の時間を削ってまでやってもらうのは申し訳ない」(公務員の20代男性)。

 「四六時中、介護に追われれば、精神的ストレスというか不安というか、想像もしえないような不安・心配が生まれてくるのではないか。相手が他に逃げたくなったとしても、もしかしたら許してしまうかも」(会社員の30代男性)

 といった声が寄せられた。

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 男女問題を長年取材してきたフリーライターの亀山早苗氏は、くも膜下出血で倒れた夫の介護疲れから夫婦関係が変化し、高校の同級生との不倫に発展してしまった40代女性のケースを紹介する。「夫とはコミュニケーションが取れない。子どもには迷惑をかけたくない、ヘルパーに頼むのにも限界がある。介護を頑張っても何も報われない。でも夫婦だから介護は続ける。そんな中、話を聞いてくれる人が現れたら、どうしてもその人とのコミュニケーションが増えていく。気持ちがつながる人と一緒にいたいと思ってしまう」。

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 亀山氏は、小室さんにも、妻という女性への愛情が、我が子への愛情に変化し、「大人として、この子を守りたい、そのために人生を生きたい」という、いわばシングル・ファーザーのような心境に至ったのではないかと推測した。

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■「介護は身内が背負わなければいけない雰囲気がある」「小室さんの引退は、ある種の介護離職」

 タレントの石井正則は「KEIKOさんが病気になられる前、お二人で食事をされているのを見たことがあった。静かで会話は多いわけではないが、長く関係ができあがっているような、とても仲のいいご夫婦という印象を受けた。あの小室さんにこういう姿があるんだと感じた。いつしか現実の自分と、あの"TK"との乖離が始まることもわかっていたと思う。それでもコンポーザーとしての才能を発揮し、スターであり続けなければならないという重圧、そしてKEIKOさんの介護。その両方を続けることができなくなったとおっしゃっていると感じた。今までglobeのファン、小室哲哉ファンのために、そういうことは表には出さずやってきたが、今回、抱えてきたその荷を降ろした、そういう表情をされていたと思う」と話す。

 その上で、「僕は離婚を経験しているが、仲の良い女性の知人に話を聞いてもらっていた時期もあった。男女関係はもちろんない。でもスターの小室さんは、そういう相談も隠れてやらなければいけなかった。今回の会見について、僕はそういう見方をしてもいいと思う」と指摘した。

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 AV女優の紗倉まなは「大切な人が病気で変わってしまった時、自分は変わらない自信があるのかと問われたら、否定できないと思う。介護って、他の方のサポートを受けると"なぜあなたがやらないの"と周囲に言われて罪悪感を感じてしまい、身内が背負わなければいけないシステムや雰囲気が根強いと思う」と指摘する。

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 「これから…どれほど生活水準とか、そういうことが下がったりとか、どうなるのか計り知れません。全くわからないですが。こういった場所で皆さんに注目して頂けるようなことは、もしかしたら今日が最後なのかなと思っています。35年近く本当にありがとうございました」と語った小室さん。

 元経産官僚でコンサルタントの宇佐美典也氏は「才能を見込んだKEIKOさんが音楽に全く興味がなくなり、介護と仕事の両立を続けられないという心の叫びだった。あの小室哲哉が"自分の才能が疑わしい"って言っていた。音楽を続けるためにKEIKOさんと離婚するか、KEIKOさんを守るために音楽を辞めるか、というくらいの究極的な状況にまで追い詰められていたんだろうと感じた。そこで小室さんはKEIKOさんに寄り添っていくことを選んだということだろう。まだ59歳なので、小室さんだったらもう一回何かやってくれるかもしれない。そういう観点で、今回の会見は小室さんが充実した人生を歩むためのいい一歩になったと思う」とコメント。

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 さらに、「欧米が個々人が中心の発想なのに対し、日本の社会保障制度は家族、家をベースに考えられてきた。生活保護制度なども、身内がカバー出来なければ国が、という仕組み。介護保険制度ができるときにも、"親は子、夫は妻が看取るものだ"という議論があった。今、そこに限界が来ている。介護業界も儲からないし、きつくて人も集まらない。身内が介護をするために仕事を辞めないといけない"介護離職"の問題もある。小室さんも、ある種の介護離職だ。そういう問題も突きつけてきた小室さんの会見を、簡単な不倫報道で終わらせてはいけない。今回の小室さんの言葉を大事に見てあげるべきだし、小室さんが幸せになるためにどうあるべきか、頑張れって報じてあげてもいいと思う。そしてA子さんはこれ以上巻き込んではいけないと思う」と訴えた。(AbemaTV/『AnemaPrime』より)


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