「私はマンガラジャラブ・アナンダと申します。現在、モンゴル国立技術大学付属高等学校の1年生、15歳です。日本の相撲が大好きです。日本の相撲学校の入学試験を受けさせてください。もし私を受け入れてくれる部屋がありましたら、その方々の気持ちに応えるべく、一生懸命頑張りたいと思います(略)」

 今場所、一人横綱で全勝(21日現在)と初場所を引っ張る鶴竜は、こんな“手紙”を名古屋にある大相撲愛好会の住所に送り、晴れて入門が叶った人だ。

 鶴竜のお父さんはウランバートル大学の教授。力士になりたかったもののツテがなく、父と同じ大学で日本語を教える先生に翻訳をお願いし、ワラをもつかむ思いで手紙を出した。2001年、まだSNSもLINEもなかった頃だ。

 手紙を受け取った日本大相撲振興会の時田一弘さんは、雑誌に載せた会の広告の住所を宛名に貼り付け、どこの誰とも分からない自分に送ってきた手紙に興味を抱き、井筒部屋を紹介する。

 でも、来日したアナンダ君を見てびっくり! 手紙には179センチ、79キロとあったのに、実際は173センチ、65キロのやせっぽち!「サバ読んでたのか!大丈夫か?」と大いに心配したそうだ。

 でも、アナンダ君は頑張った。当時あった相撲協会の新弟子検査の合格規定(173センチ、75キロ以上)のため、半年かけて180センチ、82キロにまで身体を作り、念願かなって力士に! 成長期とはいえ、すごい。

 また、来日当初は全く分からなかった日本語も、1年で日常会話に困らないほど上達する。元々ロシア語も英語も堪能。語学のセンスがあるんだろうが、いかに彼が努力家か分かるエピソードだ。

 そして入門から4年目、2005年十一月場所で十両力士になる。子どもの頃に相撲の経験はなく、バスケットボールやテニス、サッカーをやっていた鶴竜はキレのある動きに徐々に重さを加え、2012年五月場所から遂に大関に昇進する。

 大関になる時には、その昇進を伝える「伝達式」というのが行われるが(横綱への昇進時にもある)、鶴竜はここで「お客様に喜んでもらえる相撲を取れるよう、努力します」と口上を述べ、周囲や相撲ファンをビックリさせた。口上ではフツー、自分がいかに頑張っていくかを選手宣誓のように述べるのに、お客様に喜んでもらいたい、だなんて! 鶴竜のプロ意識の高さに「かわいい顔してこの人すごい!」とみなが驚いたのだ。実際、鶴竜は大関になってからも国技館へ歩いて入場したり(大関以上、普通は車で地下から入ります)、ファン・サービスを先頭に立って務めていた。

 ちなみに鶴竜が番付を上げてエラくなって行った当時、相撲界は八百長騒動などで人気が下落、そこへ大震災が起こり、横綱・白鵬を中心に力士たちは東北への慰問や都心での募金活動などで忙しく、大きく揺れている頃だった。そうした中で鶴竜の「お客様に喜んでもらえるよう」宣言は、相撲界全体に改めて気づきを与え、皆を動かしたのかもしれない? そう思うと鶴竜はやっぱり、かわいい顔してすごい人だ。

 かわいい顔して……と何度もうるさい? いやいや。本当にかわいいんだから仕方ない。こんなにかわいい横綱がかつていただろうか?というのがスー女たちの共通認識。ニックネームはわんわん(子犬に似てるから)。2016年11月場所以来の4回目の優勝を見せて欲しい。【和田静香】

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