先日行われた「格闘代理戦争」第1回戦で、魔裟斗が推薦した松村英明と武尊が推薦した中嶋志津麻の2人が勝ち抜け、1月27日に開催されるKrushでの決勝戦に進んだ。その舞台裏にフォーカス、各陣営が考えた秘策が明かされた。
松村と対戦し2ラウンドに2つのダウンを奪われ敗れた小倉拓実。柔道インター杯優勝というバックグラウンドを引っさげてこのトーナメントに臨んだこの男、打撃系格闘技未経験ながら、この大会で異彩を放つ存在として格闘代理戦争を盛り立ててきた。
試合当日にヘアカットし勝手にイメチェンし「キングスメンを意識した」と斜め上のコメントも飛び出すあたりは暴走柔道王こと小川直也が見込んだ肝の座りぶり。番組本編では諸々の事情からカットされたものの入場曲に「ダンシング・ヒーロー」を選び、入場時には小川とトレーナーの小比類巻貴之が、小倉考案の振り付けに参加するなど、キャラクターの面ではとてつもない逸材振りを発揮した。
そんな小川陣営にあって、K-1の戦い方に精通した小比類巻が小倉に授けた作戦は、「相手をコーナーに追い込む」というもの。さらに柔道選手の特性を活かし、相手が前にのめりに来た場合に足払いでコーナーに追い込むという若干ラフな戦法だ。そして小川が自身の経験から「賢くならずとにかく前へ出て当ったもん勝ち」というもの。これは一見するとデタラメなアドバイスにも感じられるが、柔道から総合格闘技へ未経験のまま飛び込んだ小川の経験則に基づくもの、ビギナーズラック的な発想ではあるが、時として経験者のセオリーから外れた戦術が下馬評を覆すこともあるのだ。
この3つのシンプルな作戦を実行することで、短期間で小倉の強さを引き出すという賭けにでた小川陣営、1R開始の序盤は、やや動きの堅い松村相手に、前に出る戦術が見事にはまった。
一方の魔裟斗は、スタミナに難のある松村に対して「最初から全力で行くのではなく、ポイントでラッシュして相手にわからないように休む。ずっと行くと疲れちゃうから」と、ペースコントロールを作戦の主軸に置いた。
さらに打撃経験の浅い小倉が突進して来ることを最初から予想し、「ガードからのアッパー」という具体的な武器を授けた。魔裟斗は「小倉はカットはできない、ローを入れたら余計パンチが入りやすくなる」と、前のめりに来る小倉を左手で押さえアッパーを打つ、ローで下半身に意識を散らせてアッパーとその布石までの流れを完全に組み立てていた。
この魔裟斗の見立ては、1ラウンド終了時の松村の動きからも見て取れる。形勢不利に見えた松村だが、パンチが当たり始め、ラウンド終了直前の最後の攻撃で右ローから、パンチというコンビネーションを見せる。しかも、それまでの動きの堅いラウンドをサウスポーで構え、スイッチする余裕も見せていたのだ。
2ラウンドに入ると、右のローから左右のフックから小倉からダウン奪い瞬く間にKO勝利。やはり試合全体を見ながら相手の次の一手を読む魔裟斗の采配が光る。
小倉は「最初は行けるんじゃないかと思って、僕が行ったら(松村が)来て最初はパンチは利いてなかったが、途中から足を使って散らされたかなと」とこの試合を振り返った。小比類巻も自らが立てたクリンチからの柔道技の足掛けが決まり作戦としては当たりが出たことに一定の評価をしつつ、小川は「最初優勢でお一発のパンチで変わっちゃうから、だからみんなガードするの」とガードの重要性を語る。「やらないとわからないじゃん柔道家ってちょっと位殴られても大丈夫って頭があるから、それを抜けないとでもやれないと判らない、いい経験したじゃん」と、小倉を讃えた。
柔道家として今後、総合格闘技の世界に足を踏み入れる小倉にとっては「ガードの重要性」という課題が試合を通し身をもって体感する敗戦となったが、それ以上に得るものを大きかったようだ。
小川は「プロの世界って師匠の猪木さんにも言われていたんですけど、勝ち負けじゃないですよ。お客さんとの対決なんですよ。今日は試合には負けたけどお客さんには勝ったと思う、いかにハートを掴むか、いくら負けてもお客さんにまた見たいなと思われたら勝ちだから」と最後の最後で名言を小倉に授けた。
後日、小倉も自身のツイッターに「勝って感動を与えたかった…負けてはしまいましたが人生初めての本気の殴り合いを体型できたしこの2ヶ月間本気の努力ができたし改めて人の大事さを知れたし僕は今回の挑戦を後悔はしていません。 まだ次の挑戦はどのような道に進むかきまっていませんが今回の経験を次に活かせるように頑張っていきたいです。」と今後への抱負を明かしていいる。小川直也の門下として2ヶ月を過ごした小倉がどのような格闘人生を歩むか?今後も注目して行きたいと思う。
(格闘代理戦争/AbemaTV格闘チャンネル)