高校時代は、プロ野球スカウトの目にも留まった高校球児だった松本吉弘(日本プロ麻雀協会)。プロ雀士に成り立ての頃は、父親にも認めてもらえなかった。その後、發王位を獲得し、メディア対局にも出始め、RTDリーグへの出場を伝えたところ、父親から自分の生き方を認めてもらえるようになった。最年少出場となる思いとは。
史上最年少棋士としてプロ入り後、前人未到の29連勝を達成した藤井聡太四段。若きスターの出現には、将棋界だけでなく世の中が湧いた。
麻雀界にも将来を嘱望されている選手がいる。21歳でプロ入り後、ストレートに昇級を続け、現在は日本プロ麻雀協会B1リーグに所属する松本吉弘だ。トッププレイヤーが居並ぶRTDリーグの舞台で戦えることは「これまでの麻雀人生の中で一番うれしいこと」と素直に喜びを口にする一方で「強い方はいくらでもいる中で選んで頂けたのは、年齢と強面のキャラクター」と選出理由を冷静に自己分析している。
父親にずっと教わりながら、幼稚園から高校まで野球をやっていた。元々体は大きく、だらしない格好をしていると目立つので、小さい頃から姿勢には気をつけていた。ポジションは187センチの身長を生かし、ピッチャーとファースト。プロ野球のスカウトが見に来たこともあった。経営者でもある父親は、サイバーエージェント藤田晋社長のことを尊敬していた。でも息子が麻雀プロの道を選んだことに対しては、応援してくれていたわけではなかった。麻雀プロという職業自体、世の中に認知されていない中、父親もそのひとりだった。しかしRTDリーグ出場の話を切り出したら、親戚や社員に対して「息子は麻雀プロをやってるんだ」と堂々と言ってくれたという。自分の人生の軸を父親に認めてもらえたことは心底うれしかった。
信条は、努力だけは惜しまないこと。ひたすら打ち込み、痛いミスを経験し、それを活かすことでしか成長はない。ミスは原因を突き詰めていけば、同じミスを繰り返すことは減っていく。そうやって失敗を限りなくゼロに近づけていく、一見地味な作業を続けられる人こそが強者だと考えている。
「僕の麻雀はファインプレーは多くありません」自身の麻雀スタイルをひとことで言えば、ベストバランス麻雀。門前高打点や仕掛け巧者といった括りではなく、様々な選手のいいところを合算し、自分のカラーに育てながら進化を続ける。その中で相手との距離感を測りながら、ギリギリまで高打点を追い求める。何が最適バランスなのかは、相手によって変えるのではなく、卓上で河を見ながら模索していく。
対局時には、強面が引き立つ黒っぽい服装と決めている。麻雀界も放送対局の時代を迎え、1000人以上いるプロの中で、認識してもらうためには、麻雀プラスアルファの部分は重要視されて当然。だから「恐い」と言われることは、松本にとっては褒め言葉。「見た目は昔から変わらないんで、得している部分もありますね」と自笑する。
最年少だからといって先輩プロたちに挑むとか、胸を借りるという気はさらさらない。「同じ舞台に立てた以上、最高のパフォーマンスを出して勝ち切る」それだけだ。【福山純生(雀聖アワー)】
◆松本吉弘(まつもと・よしひろ)1992年5月3日、神奈川県出身、O型。日本プロ麻雀協会所属。第25期發王位。異名は「卓上のヒットマン」。
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