
■SBI北尾氏「カス中のカスですね」
仮想通貨取引所「コインチェック」が不正アクセスを受け、約26万人の資産(約580億円)が流出した問題。

日増しに注目が高まる仮想通貨をめぐる問題に、日銀の黒田総裁は参議院予算委員会で「決済や金融サービスの安全性、安定性に対する人々の信頼をいかに確保するかということが常に大事な視点となると思います。仮想通貨関連サービスの提供者は自主的かつ積極的に投資家へのリスクの説明やそれから十分なセキュリティー対策実施など信頼確保に努めていくことが求められると思います」とコメント。

オンライントレードも取り扱う金融大手SBIホールディングスの北尾吉孝社長は「徹底的に審査しなくてはいけない。お客さんを集めることだけにお金を使っている。こういう輩は、もうカス中のカスですね」と、厳しい言葉を用いて非難した。

当のコインチェックは、現在も日本円のほか取り扱うすべての仮想通貨について引き出せない状態が続いている。再開時期については、安全性が確認されることを前提に、"数日中にも見通しを伝える"としているが、未だ不正流出の原因の特定には至っていない。
■「あくまでもコインチェックの問題」
31日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した経済学者の野口悠紀雄・一橋大名誉教授は「安全管理が信じられないほど杜撰で、起きるべくして起きた事故。ただ重要なのは、仮想通貨の基幹システム、ブロックチェーンそのものがハッキングを受けたということではなく、あくまでもその外にあるコインチェックという取引所での問題。銀行が強盗に遭ったり、現金輸送車が狙われたりしたとしても、日本銀行券のシステム自体がダメになったわけではないのと同じだ。ここを区別することが極めて重要。使えば足が付くので、取引には持ち込めないだろう。むしろそうやって追跡が可能だという点で言えば、日銀券よりも確実な仕組みだ」と話す。

また、野口氏は「2年前にイーサリアムで実行されたことだが、NEM財団はハードフォークという手法を用いて流出前の状態に戻すことも原理的には可能だ。しかし、勧告している安全策を取らなかったコインチェックの責任であって、NEMやブロックチェーンそのものの責任ではないから、それはしないと明言した。当然のことだ」と指摘。さらに、「本来、仮想通貨は自分のウォレットで管理するのが原則。その方が、取引所よりは狙われにくいはずだ。しかし、面倒くさいから取引所に預けている。マウント・ゴックス社の事件も同様で、預けていたから無くなってしまった。仮想通貨を持っている人の責任もある」とした。
■突然動き出したNEMの狙いは撹乱か
30日夜には、NEM財団やボランティアが監視する中、流出したNEMが突然動き出したことも話題を呼んでいる。およそ30分間にわたって、ハッカーの口座から別の9つの口座に100XEM(日本円で約1万円)ずつが送金されていたことが取引履歴から明らかになったのだ。

このうち8つの口座は元々存在したもので、関係のない相手に送りつけて追跡作業を撹乱しようとしている可能性も指摘されていえる。NEM財団も新たな送金があっことを認めた上で、「セキュリティー上の懸念があるため、現時点での詳細な対策については発表しませんが、盗まれた資金は、いかなる取引所にも送られていません。これらの資金が公的取引を離れている限り、特に大量の資金を流動化することは非常に困難です」とコメントしている。
これについては野口氏も、「撹乱しようとしているのではないか。みんなが騒ぎ、メディアが取り上げることで、注意を逸らされているかもしれない。そうなれば犯人の狙い通りだ」との見方を示した。
■LISK"上場"でビットフライヤー社のサーバーはダウン
騒動の中、衰える気配を見せない仮想通貨。31日には、日本ではこれまでコインチェック社でしか扱われていなかった仮想通貨「LISK」が大手仮想通貨取引所「ビットフライヤー」で取引することが可能になった。
野口氏は「LISKには、イーサリアム同様、ビットコイン型の送金目的の仮想通貨とは違う機能があり注目されている。ブロックチェーンの上にアプリケーションを乗せ、スマートロックなどの事業を展開することが期待されている」と話す。

しかしTwitter上には「LISKに金をぶちこめええええええ」「LISK持っててよかったー」など、熱狂ぶりを伝える投稿も相次ぎ、午後2時半の"上場"発表の際には1LISK=2471円だった相場は2時間後には約68%まで急上昇。午後3時頃からはビットフライヤーのサーバーがダウン、アクセスが出来ない状態に陥った。

背景にはLISK目当てのユーザーが一度にアクセスしたことが原因とみられている一方、売られる前から種々の情報を掴んでいた人たちが儲かる状況にあったとの見方もある。ジャーナリストの堀潤氏は「仮想通貨の伝道師のような人が、"次はこれが来るよ"などと購入を勧誘しているのを見た。"退職金に期待できないからこれで財を成すんだ"と意気込んでいる会社員の方もいた」と証言した。
■「送金がしにくくなってしまったのは極めて残念なこと」
31日には、詐欺的行為を助長しかねないと判断したFacebookが、仮想通貨を使った資金調達(ICO)に関する広告を全世界で禁止すると発表するなど、影響が拡大している。
「日本ではメガバンクが独自の仮想通貨を出す計画があると報じられているし、中央銀行が出す計画もある。そうなれば全ての取引は中央銀行のものを用いて行われることになるだろう。そうなればもちろんプラスの面もあるし、マイナスの面もあるが、我々の生活は大きく変わる」と将来を展望する野口氏。

「数年前まで仮想通貨は送金や決済の手段として期待されていて、アメリカでは1年ビットコインだけで生活したという人もいる。それだけ決済手段として受け付ける店が多いからだ。ところが残念なことに、投機の対象となって非常に値上がりしたことで手数料が上がり、国内の送金の場合も銀行の口座振替を使うより3倍ほど高い。本来の目的である送金がしにくくなってしまったのは極めて残念なことだ」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)