「冬の札幌は何かが起きる」新日本プロレスの年明け興行のキャッチフレーズともなった札幌大会。鈴木みのるが、棚橋弘至を下してIWGPインターコンチネンタル王座を奪取。1月4日後藤洋央紀に敗れNEVER無差別級王座を失い、リング上で禊の断髪を自らの手で断行した鈴木みのるが、僅か3週間も経たずに、位置づけとしてはワンランク上のICの白いベルトを腰に巻く姿を想像した人は少なかったはずだ。

多くの人がすっかり忘れているように思えるが、鈴木みのるは今年6月で50歳になる。あのアントニオ猪木でさえ現役感を感じさせる戦いを見せた最後の藤波辰爾とのIWGP戦のときが40代半ば。過去を見ても多くの名選手が40歳を境にメインから第2グループへ、試合順も前へ前へと行く中、この男は今なお憎たらしく恐ろしい程の殺気とともに30年目のキャリアを第一線で戦い続けている。その鍵となるのは、トップで戦いつつけるための狡猾さだ。

今回のICを巡るタイトルマッチ。試合でこそ毎回批判される軍団の介入はなかったものの、タイトル戦前に棚橋のパフォーマンスを落とすために抜かりなく準備し続けてきた。タイトル前哨戦から満身創痍の棚橋弘至の膝を徹底的に狙い続けた鈴木軍のチームプレーもあり、タイトル戦に帳尻を合わせたように棚橋の膝の時限爆弾が爆発。足4の字、ヒールホールド、膝十字と残酷なまでの膝攻め、さらにフィニッシュのゴッチ式パイルトライバーを決めてなお膝責めという公開処刑にたまりかねたレフェリーが試合ストップを宣言した。

この衝撃ともいえる鈴木のIC王座奪取は、単なるベテランの奮起、「鈴木軍の勢力拡大」と言ったユニット闘争とは違う地盤沈下を新日本プロレスのリングにもたらした。これは、昨年の内藤と棚橋のICを巡るイデオロギー闘争よりも大きなインパクトを感じさせる。

まずはシングル・タイトル戦線から長らく距離を置いていた真壁刀義が鈴木みのる討伐に名乗りを挙げたことは大きい。久々に真壁のやる気スイッチが入ったことで、追随しベテラン、中堅に至るまでIC奪取を目標にギラつき始める予感すら感じさせる。鈴木というターゲットの誕生により、近年その存在意義が問われて来た「タイトルの再定義」というテーマも相乗効果として生まれたのだ。

また皮肉ではあるが、今回惨敗した棚橋弘至にとっても鈴木に完膚なきまでに叩きのめされたことで、復帰と負傷欠場を繰り返す「負のサイクル」から抜け出すキッカケができたのではないだろうか。傷を癒やしたエースの完全復活は「鈴木へのリベンジ」から始まるだろう。ここでも憎らしいがカンフル剤としての鈴木みのるの存在は大きい。

とは言え鈴木本人はIC王者は「単なる通行手形」あくまで通過点と言い放っているのも痛快だ。IC王座を奪取したその日の会見で、殺伐とした空気を撒き散らし鈴木はこう言い放った。「まだいるだろう、このオレの頭を踏んづけてるヤツらが。さあインターコンチネンタルは何番目のベルトなんだ。言ってみろ、俺も良く知っているし、客もよく知っている、オマエのところに行く。これは手形だ。通行手形だ。」

最後のターゲットは、オカダカズチカのIWGPヘビー級王座だ。昨年、札幌で敗れ、G1クライマックスでは、30分時間切れ引き分けフルタイムの死闘を演じあと一歩のところまで追い込んだ。現在順風満帆すぎるIWGP防衛ロードを歩むオカダだが、今回の棚橋戦のように鈴木軍によるシリーズを通して破壊活動など綿密に練られた戦法で、最後のお宝に手を伸ばす日もそう遠くないような気がしてくる。

「50歳のIWGP戴冠」は同時にGHCヘビー級王座、三冠ヘビー級王座に続く日本のメジャータイトル「メジャー完全制覇」を意味する。あの盟友、高山善廣が実現したグランドスラム達成。今年「デビュー30周年」という節目を迎える鈴木みのるの「命懸けの戦い」に注目したい。

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