メインカードの消滅により突如開催が決定した「K-1GP 2018-K'FESTA.1」でのK-1スーパー・フェザー級トーナメント。メインイベンターである国内外の8人の同階級の選手の参戦が決定。K-1/ KRUSHの常連選手という団体の同階級の実力者を総動員、他団体に参戦しているスアレック・ルークカムイ、さらには武尊と同門の卜部弘嵩までエントリー。
しかし出場する選手にとっても、コンディション作りやモチベーションなど様々な面で試される過酷な大会であることはあまり伝えられていない。大本命と言われている武尊にとってもこのトーナメントはかつて無いほど厳しい。そんな胸中をはじめて語った。
「いろいろ思うところはあるし。結構僕の中でも許せないことたくさんあったんですけど。もうどうこう言ってもしょうがないし、マイナスなことは言いたいくないんで、プラスな事しか口に出したくないんで…」と口を開いた武尊。これまでの試合と同じくポジティブな発言を続けることの方が簡単なのかもしれないが、やはり突然のカード変更に感じることは少なくないようだ。自身にとって新たな上の階級であるスーパーフェザーでの初挑戦がトーナメントということで、不安も少なくないようだ。
「階級を上げて1発目で、60kgのトーナメントで体がもつかと言う心配もあったり、今まで(本来のタイトル戦にあわせて)何ヶ月もサウスポーの練習をしてきて、今回の対戦相手は全員オーソドックスなんで、僕の中では本当なんだこれ?みたいな気持ちしかないですけど、こういう逆境が大きければ大きいほど僕は強いし、これに買って優勝することによって、たくさんの人に夢とか希望パワーを与えられると思うので、今はそれが1番のモチベーションになっています」
「不安要素は今は不安要素はしかないですけども、まだ時間あるし、ここから試合当日に向けて心も体も最高の状態に仕上げられたら。不安要素をなくすために練習するだけですね」と不安の中で、モチベーションを武尊なりに見つけ、それに向かう姿勢を明かしている。
対戦相手に対する対策など具体的な戦略もまだままならない状況ではあるが、トーナメントを俯瞰しつつ対戦相手について口を開いた。1回戦で対戦するスタウロスについては「やっぱ強いと思いますね。1発があるし。スタウロス選手は-65kgとか上の階級で闘っている選手なのでパワーの面では差はあるなと思う。それでも僕がずっと言ってるのは格闘技は気持ちなので身体の大きさは気持ちで補える」と語った。
決勝戦で対戦したい選手の名も明かした。武尊とは別のブロックにいるスアレック・ルークカムイだ。日本では「REBELS」で梅野源治などと壮絶な試合を見せた日本のリング事情も知るムエタイの実力者の一人だ。武尊は「ムエタイは過去のK-1でもチャンピオンを出しているし、今までのトーナメントでもタイ人が出ていないトーナメントだと納得されない所もあったので、今回はムエタイの強い選手を呼んでくれたので嬉しいです。」と明かした。
同門の卜部弘嵩との対戦に関しては意外な言葉が帰ってきた。「そこに関してはなんも考えてないです。可能性の1つですけど、その可能性は僕の中でないものだと思って。戦うつもりは一切ないです。それを気にしたら僕は試合ができなくなるので、今回は自分のためでもあるけど、もうファンのために戦おうと思っているので」。以前から同じ釜の飯を食う同門との対決には抵抗を示して来た武尊だけに、やはり卜部とは当たりたくないというのが本音のようだが、少なくとも武尊と卜部が対戦するのは決勝戦である。
これまでも数々の名シーンを生み出してきたK-1のワンデイトーナメントだが、そのダメージの大きさや選手にかかる負担について武尊が口を開いたのははじめてのことだ。「僕は本当はトーナメントはもうやりたくなかったんですけど、ダメージで試合ができなくなったりするので。前回のフェザー級のときも言ってないですけど、交通事故にあった位の体のダメージがあったので。それによって練習ができなくなったり試合がすぐできなくなったり、僕はそれがすごく嫌だったので。でも逆に言うとそこ勝ち抜けばそれだけのドラマを見せると思うし、見てる人からしたら、1日3試合殴り合って蹴りあってボロボロになっでもチャンピオンになってる選手の姿にパワーを貰える。僕もK-1のトーナメントという形式の姿にパワーを貰っていたと実感したから」と、やはりここは「ファンのため」という気持ちが彼を奮い立たせているようだ。
格闘技の世界で、対戦相手が怪我や諸事情で試合が中止になるということは決して珍しいことではないが、今回組まれたスーパー・フェザー級トーナメントを闘う選手にとっては極めて不利な条件で臨む大会である。その一端は武尊の発言の数々からも垣間見える。
それでもこのハードな内容を推し進める理由は「K'FESTA.1」は、新生K-1にとっても特別な想いを込めた大会であるからである。ひと回り小さな横のコミュニティアリーナで大会を開催して来たK-1にとって横目に見てきたさいたまスーパーアリーナのメインアリーナは悲願の大会。準備期間僅か1ヶ月、敢えて挑戦する選手たちにエールを贈りつつも、武尊も含む全8人のファイターにとって気力、体力、スキルあらゆる強さが試される茨のトーナメントとなりそうだ。