各メディアが「前人未踏」と繰り返し報じてきた、あの29連勝が再び達成されるかもしれない。2月17日の朝日杯将棋オープン戦で中学生として初の棋戦優勝を果たした中学生棋士・藤井聡太六段(15)は現在、公式戦12連勝中だ。数字だけ見れば日本中を驚かせた29連勝の半分以下だが、その中身は超ハイレベルのものだ。29連勝時と今回の12連勝、対戦相手を比較してみた。
藤井六段のデビュー以来の連勝記録が大きく話題になり始めたのは連勝が10、15と伸びた後。その理由は対戦相手だ。奨励会からプロデビューしたばかりの若手棋士でも、実力があれば、いきなり連勝すること自体はさほど珍しいことではなく、年度表彰される「連勝賞」も若手棋士が受賞することが多い。実力がある棋士でも各タイトル戦のトップリーグに参加すれば、連勝すること自体が難しい。そのため藤井六段の連勝も、当初はさほど騒がれなかった。
「これは本物だ」と評価がさらに高まったのは、若手の中でも実力者に勝ち始めてからだ。13連勝目の千田翔太六段(23)は2016年度にタイトルにも挑戦し、最多対局賞、最多勝利賞を受賞していた。ここを起点に、若手の中でも高勝率を誇る棋士たちに勝ち続けたことから「これはどこまで続くかわからない」という期待感が高まった。最終的に29まで伸びた連勝記録の偉大さは周知のとおり。プロ棋士同士の戦いにおいて、一度も負けずに29回も勝ち続けることは、やはり奇跡に近い。
では、今回の12連勝はどうか。2月17日の朝日杯では将棋界の第一人者・羽生善治竜王(47)、さらには順位戦A級の広瀬章人八段(31)と2人の強豪に勝利した。さらに、この棋戦での準々決勝では佐藤天彦名人(30)にも勝った。昨年までは、細かい連勝を重ねるもののA級棋士やタイトルホルダーとの対戦で止まっていたが、今年は新年初対局となった1月6日に、同期の大橋貴洸四段(25)に敗れて以来、その後は1度も負けていない。
藤井六段は、昨年と同様に各タイトル戦の予選の対局を繰り返すことになる。一部のタイトル戦では昨年の成績からシードとなることもあるが、トップ棋士たちは予選ではなく本戦から出てくるケースが多いため、しばらくぶつからない可能性も高い。29連勝時から確実にパワーアップした藤井六段であれば、昨年以上の活躍をしても不思議ではない。30年ぶりに塗り替えられた大記録を、自ら再び塗り替えるのか。まだまだ注目するポイントは尽きそうにない。
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