財務省が森友学園の国有地売却に関する決済文書の改ざんを認めた問題で、政府は12日、14の文書に書き換えがあったと公表した。提出された80ページにわたる報告書の中には、政治家のほか森友学園の教育方針に賛同していたとされる安倍昭恵夫人の名前も記されていた。財務省の職員はなぜ彼らの名前を消す必要があったのか。
「打ち合わせの際『本年4月25日 安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは“いい土地ですから前に進めて下さい”とのお言葉をいただいた』との発言あり」
文書の中からこの「昭恵夫人」の名前は削除されたが、昭恵夫人のコメントは籠池氏の発言によるもの。昭恵夫人が実際にこの発言をしたかどうかは定かではなく、籠池氏からの伝聞ということになる。
AbemaTV『AbemaPrime』に出演したお笑い芸人の小籔千豊は「今の報道とか野党は、これを籠池さんが言っていましたと言わずして、『前に進めてください』と昭恵夫人が言っていましたと、夫人が言ったことが決定したかのような心証を与える言い方をする。野党とか報道も汚いなと思う」とコメント。元財務官僚で、希望の党の大串博志衆院議員は「籠池さんが言ったということは事実。そういう機会を与えた総理夫人もどうかなと思う。総理夫人が簡単に名誉校長とか受けたら、どういう風に役所が感じるかというのは十分に考えるべきだと思う」と反論した。
改ざん後の文書では、そのほかの国会議員の名前が削除されたほか「特例的な内容」「本件の特殊性」という文言も削除されており、政治家からの指示や官邸への忖度があったのではという疑念が残る。
「特例的」「特異性」という言い回しについて、大串氏は「1つは(国有地に)ゴミの存在が明らかになって、開校時期が明らかになっている中で籠池さんが買いたいと言いだした特殊性。もう1つは、安倍昭恵夫人の関与疑惑。夫人付き秘書官の方が、財務省本省に対して本件に関して直接問い合わせをするようなことが行われていて、政府あるいは近畿財務局・理財局としては何らかの解決を図らなければならないという忖度があったのではないか。この2つの特殊性があるということはぬぐいきれないと思う」と指摘。
一方、慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は、籠池氏の存在が一番の特殊要因だとし「『籠池さんてこんなにやばい人だった』ということを官僚の人は念のために書いていて、それが全ての発端になったんじゃないか。本当は答弁で交渉したと言っても良かったが、(佐川氏が)うっかり何のやりとりもしてないと言ってしまったから、辻褄合わせをしたという話。政治家が関与したというより籠池さんの交渉が面倒臭かったのでは」との見方を示した。
元財務官僚の高橋洋一氏も「(佐川氏は)最初から『交渉がないように機械的に処理した』という言い方をしたが、これはびっくりする。トラブルがあるんだから交渉があったのは当たり前。別に何の不思議もない。これだけ交渉があったということも決済文書を読めば分かる。それをあたかもないように話したので、佐川君大丈夫かなと思った」と佐川氏の答弁を振り返った。
一連の騒動は、官邸が官僚幹部の人事権を持つ“官僚システム”に問題があるのではとの見方もある。2014年、安倍政権は内閣人事局を設置し、幹部公務員約600人を一元管理した。佐川氏の辞任はトカゲの尻尾切りなのか、それともトカゲの頭なのか。
高橋氏は「(改ざんを)誰がどのように指示したか、もうちょっと検証したほうがいい。財務省も信用できないから第三者。佐川氏も含めて何人か告発されていて、大阪地検が受理しているので刑事事件にできる。刑事案件にすると、誰が悪かったかはっきり分かる。その過程で指示関係も分かる。国会で独立委員会みたいなものを作ることもできるので、誰がどういう風に言ったのかをまず固めないといけない。その結果、トカゲの尻尾切りなのか、頭切りなのかよりはっきりする」と主張。
大串氏は「トカゲの尻尾切りだと思う。内閣人事局というものが安倍政権の元でできて、役所の幹部600人くらいの人事を全部官邸が握っている。そこで働いていたら『官房長官に嫌われたらどうしよう』『総理に嫌われたらどうしよう』といろんな忖度をしなくてはいけないと思う。巨大な官邸の力からすると佐川さんは尻尾。『あなたたちの人事権は全部握っている』という力をあまりにも強く使いすぎる今の仕組みは行き過ぎなのでは」と考えを述べた。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)