大相撲の本場所が15日制に定着したのは昭和24年夏場所から。ほとんどの関取衆は「15日間は長い」と口をそろえる。考えてみれば、15日間連続で試合をする個人競技は相撲ぐらいなもの。格闘技系の試合はいくら人気興行であったとしても選手のコンディションを考慮すれば、月に一度が限界だろう。ゴルフのトーナメントもせいぜい3~4日といったところだ。防具を身につけることなく行うコンタクトスポーツでありながら、15日間連続して相撲を取り続ける力士がいかに過酷な環境下で戦っているのかが分かろうものである。自身よりはるかに大きな相手と毎日対峙している幕内の石浦は以前、こんなことを言っていた。
石浦 「自分ではあまり感じなかったけど、いろんな格闘技の選手から『15日間、毎日フレッシュな気持ちでやるのは考えられない』と言われた」
約2週間も毎日、戦っていればケガもするし疲労も蓄積する。風邪をひけば厄介であり、コンディションを一定に保ち続けるというのは、言葉で言うほど易しいものではない。負けて落ち込んだ気持ちを引きずっていては、次の日の相撲にも影響する。気持ちの切り替えも大事であり、場所中は精神的疲労も相当なものだろう。
力士は「一日一番」とよく口にする。15日間をトータルで考えていてはとてもではないが、気が滅入ってしまうからだ。「15日間のうち、何日か集中しきれない日がある」という話を力士から聞いたこともある。前半で白星を大きく先行させてもケガやプレッシャーで後半に大失速するケースは枚挙にいとまがない。逆に前半で大きく連敗しても後半で取り返せるのが15日制の利点でもある。土俵上で繰り広げられる悲喜こもごものドラマ。それは15日間という絶妙な期間が、大きな演出装置として機能しているような気がしてならない。
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