3月21日に開催された「K-1 WORLD GP 2018 JAPAN ~K’FESTA.1~」。巷では、武尊の前人未到の3階級制覇が大きなニュースになり断然注目度が高いが、この大会で圧倒的な強さをみせ次世代エースの風格を見せたのが、セミファイナルでK-1スーパー・バンタム級王座を初防衛した武居由樹だ。
武居への高い評価は既に昨年のK-1実行委員会の年間MVPで証明済み、その結果セミファイナルという大役も務めた訳だが、2015年10月からKrush~K-1で破竹の12連勝、しかもそのうちの9試合でKO完全決着と、その控えめな性格からは想像できないド派手なKOの山を築いてきた。
普段の柔らかな物腰とは裏腹に武居は、現在のK-1の全階級の中で最も完全無欠で恐ろしい王者になりつつある。今回の久保賢司戦も昨年4月の「第2代スーパー・バンタム級王座決定トーナメント」での判定勝ちを不服として実現したリベンジマッチの位置づけ。トーナメントの決勝戦、1日3試合目という条件での勝利と考えると十分な内容だったにも関わらず、それを良しとしない辺りも彼の自分への厳しさの表れだ。
ほぼ1年ぶりの再戦。序盤こそ蹴りを主体に久保が積極的な攻めをみせるものの、素早い動きで久保の蹴りをかわすと、次の瞬間には一気に加速して左パンチから、前蹴り、左右のパンチ連打、左ミドル、右フックでダウンを奪うと。その後も次々と攻撃を繰り出し久保をKO。1分27秒で完勝し、因縁の対決に終止符を打った。
この2人の再戦にも隠されたストーリーがある、試合決定時から常に口撃を仕掛けてきた久保もまた「武居君がベルトを守るために、ポイントアウトしようとしたらこの階級は終わる」と厳しい口調で迫り完全決着を心から望んだ一人だった。一度は第一線から退く意向を示していた彼が、完全勝利という宿題を武居に突きつけたのも、ライバル心を超えた思いがあったからだろう。
自らバイキンマンと名乗り「バイキンマンをK-1のリングから抹消すること。明日は本気で殺しにくるつもりで来い」という冗談にも思える挑発の言葉も、終わってみれば晴れの舞台へ望む21歳の若き王者へのエールにすら感じられる。
見事に久保超えを演じてみせた武居だが、気になるのはライバル不在の状況だ。スーパー・バンタムで今や敵なしという状態だ。一夜明け会見でも「強い選手とやりたいです。タイ人ともやってみたい。ライバルが欲しいです」と明かした通り、新たなライバル探しが今後の課題となる。
階級を上げながら、自らの試練のハードルを上げていった武尊に対して、武居は現在のウェイトでより強い相手と対戦することで自らの王国を築こうとしている。唯一名乗りを上げているのは、Krush時代に判定で勝利している軍司泰斗。すでに3年の月日が流れ、郡司も着実にK-1での実績を積みつつある。
一度は勝利しつつも数少ないKOしていない相手という意味では、武居と郡司のタイトルを賭けた戦いは、間もなく実現することだろう。
不動のエースとなった武尊のような派手さはないが、武居の素朴で愛すべきキャラクターは、カッコよさやイカツさなどが売りになる格闘家の系譜では余りにも異端すぎる印象がある。「みなさんこんにちは!足立区から来たPOWER OF DREAMの武居由樹です」というどこか可愛らしい挨拶も含め、ちょっと気弱そうなのにリングに上がると途轍もなく怖く強いチャンピオン。まるでコミックから出てきたような次世代スター、武居由樹のスーパースターへの道を見届けて行きたい。