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 前頭二枚目・阿炎(錣山)、その取組と言動が本場所を盛り上げている。

 阿炎といえば、三賞受賞の際にテレビカメラに向かってピースサインをし、物議を醸した力士だ。昔から大相撲を観てきた相撲ファンからすれば「今どきの子」「現代っ子」という捉え方になってしまうだろうが、本人は「そう言う人たちだって、現代に生きているうえでは現代っ子」という考えを持っている。

 阿炎は、自分なりに力士としての見え方を考えている。SNSの使い方に関しても、若い衆が力士らしからぬ使い方をしていることに対して「かっこ悪く見える使い方はしない方がいい」と言い切った。今では代名詞となった「綺麗に脚の上がる四股」にこだわるのも、最初は後援会の人からのひと言だったが、「観客が喜ぶ」という理由で続けている。

 それでも硬派な力士像を好む相撲ファンからは「チャラい」と揶揄されがちだが、大相撲の大切な部分をしっかり継承していることを、場所前の取材で確認することができた。

 前頭二枚目で錣山部屋の部屋頭となった阿炎だが、同部屋で十両七枚目・青狼との三番稽古では一番一番「ごっちゃんです」と言って稽古をしており、「番付が上がろうが、兄弟子は兄弟子。うちの部屋は特にそこは厳しく、自分も大切なことだと思っていますから」と話している。過去の力士像からすればニュータイプと言われても仕方ないが、自分の哲学をしっかりと持った力士であることは確かだ。

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 今場所からは番付を前頭二枚目に上げた。幕内上位は横綱、大関といった上位戦が序盤に組まれることになっており、初日から両関脇の逸ノ城栃ノ心、小結の御嶽海を相手に連敗を喫したが、相撲内容はそれほど悪くなかった。阿炎のスタイルは立ち合い両手(もろて)での喉輪を狙ってからの突っ張り、そこで相手が引けば一気に前に押していく相撲だ。その立ち合いが通用しなかった場合はすぐさま横に動き、相手をいなして攻める。

 初戦の逸ノ城戦では相手が大きく、力もあるので、一度当たってから横に動いた。御嶽海戦も同様だ。この横の動きが先場所より速く、移動距離が長いように思えていた。すると四日目には新三役の遠藤が引いた瞬間を見逃さず前に出て初日。六日目は横綱・白鵬を見事に引かせて初金星を獲得。勝利後のインタビューでは「きのう誕生日だったお母さんに早く報告したいので帰っていいですか? すみません。ありがとうございました」と言って小走りにインタビュールームを後にした。

 これまで力士のインタビューと言えば「日々の稽古のおかげ」「一日一番集中して」というお決まりのセリフが多かったが、阿炎の歯に衣を着せないインタビューは相撲ファンの心を掴んだ。翌日の豪栄道戦も勝利した阿炎は連日のインタビューで「今日はお父さんに電話します」と答え、再び反響を呼んだ。その一方、対戦相手への敬意を欠くと感じた相撲ファンも少なからずいたはずだが。

 八日目を終えて3勝5敗。残り七番となり、阿炎が今場所掲げている「新入幕から三場所連続2桁勝利」まで待ったなしの状況となった。しかし可能性があるかぎり諦めないと公言している以上、必ず成し遂げて本場所を大いに盛り上げてほしい。賛否の「否」の相撲ファンを納得させられる相撲を取ってこそ、次のステージへステップアップできるに違いない。 【相撲情報誌TSUNA編集長 竹内一馬】

(C)AbemaTV

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